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社会科散策(政治)論述№07-平等とは [政治]

4-2 基本的人権の保障②-平等原則(平等権)

〔平等原則〕(14条)
  すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない(14条1項)。

 平等とは,絶対的平等ではなく,❶相対的平等,即ち個人の差異に応じた❷合理的な区別を認める取り扱いを意味する。

相対的平等
〔研究〕平等とは何か。
 日本国憲法は,第14条1項において,法の下の平等の原則を定めているが,ここにいう「平等」とは何か。
⑴相対的平等とは何か。
 まず,平等とは,合理的な区別を認める相対的平等を意味する。つまり,各個人の置かれた状況に応じた合理的な区別や取り扱いをすることを意味する。同じ状況にない個人,例えば大人とこども,男と女,健常者と身障者に対してその差異を考慮することなく全く同一に扱うことは真の平等とはいえない。
 もっとも,その差異とその取り扱いとの間には合理的な関連性がなければならない。たとえば,性別の違いだけで公務員になれないとするのは合理的ではなく不当な差別である。これに対し,労働条件について女子を優遇したり,少年犯罪について刑罰ではなく保護処分を科することは合理性があり不当な差別とはいえないであろう。ただ,さまざまな事例において,何が合理的なのか不合理なのかを区別することは,実際はそれほど容易なことではない(参照⇒下記の合理性判断基準)。
⑵結果の平等
 憲法14条は,「結果の平等」(実質的平等)までも許容するのか(これは不平等の「積極的差別解消措置」としても議論されている。アメリカでの黒人や女性に対する大学入試や雇用における特別枠などがそれに当たる)。
 市民革命期における市民は,財産と教養のある抽象的な「人一般」として捉えられたから,ここでは形式的に同等に取り扱うことが要求された。近代市民社会では,この形式的平等の観点から,身分差別を廃して「機会の平等」が与えられることが合理的だと考えられたのである。
 ところが,19世紀以降の資本主義経済の発展とともに,個人間の経済格差による不平等が拡大していくと,機会の平等だけでなく,機会の平等の結果生じた貧富差の解消も大事だとの考えが生じてきた。これがいわゆる結果平等の主張である。
 しかし結果の平等は,自由な資本主義社会を根底から覆しかねない。即ち,どこかの小学校や幼稚園の運動会でやっていたような「皆一緒のゴールイン」は,自由な競争を否定するものである。個人の自由を尊重する日本国憲法が「平等権」の内容として結果の平等を保障しているとは考えにくい。
 もちろん,現代大衆社会においては結果平等を考慮せずに個人の尊厳を確保することは難しくなっている。しかし,それは平等権(個人の主観的権利)の問題ではなく社会権の問題として,すなわち国家の施策(裁量)として解決していくべきものであろう。
※結果の平等(実質的平等)が14条の問題となりうる場合もあるとする立場
①「合理的な取り扱い上の違い」(合理的差別)に当たるか否かを判定するに際しては,実質的平等の趣旨が最大限考慮されなければならない(積極的差別是正措置はこの観点から検討されるべきである)。したがって,実質的平等を達成するために形式的平等を制限する法令等が,その理由で合憲となる場合もありうる」(芦部信喜)。
②「実質的平等(結果の平等)を理念を実質化したのが,社会権の諸権利である。憲法14条1項から,社会権類似の権利が派生するわけではないが,国が積極的に「実質的平等」の理念に反する行為をした場合(たとえば,所得税を改正して,全国民同率とした場合)には,これによって害をこうむった者は14条違反(平等権侵害)を主張しうる」(長尾一紘)。
※考察
 平等を機会の平等・結果の平等に分析しても益はない。なぜなら,何をもって機会の平等,結果の平等というのか明確ではないからである。即ち,形式的平等と機会の平等とは異なるのか,スタートラインの平等や初期条件の平等と結果の平等とは何がどう違うのか不明である。また,そもそも機会の平等を実現するために平等を実質化したのでは両者を区別した意味がなくなる。
 平等は絶対的にではなく相対的に合理的判断すればよいというだけの話しで,ロールズの分析を用いることにどれだけの意味があるのだろうか。平等権の中に社会権も含めよということか。

合理性の判断基準
 相対的平等の下での合理的区別の判断方法・基準については,目的と手段の間の合理的関連性が必要とされるとともに,14条1項列挙事項あるいは権利の性格に応じて,厳格審査,合理性審査がなされている。
※目的・手段審査
 立法目的の合理性(区別の目的が合理的か否かのテスト),手段の合理性(立法目的達成のための手段が合理的か否かのテスト)を判断して審査する。
※厳格審査,厳格な合理性審査,合理性審査
 表現の自由などの重要な人権については厳格な審査,14条1項列挙事項については厳格な合理性審査(中間審査),その他はより緩やかな合理性審査により合理性を判断しようとする考え方である。
 
※平等原則が問題となる事例
①人種による差別
 人種差別撤廃条約批准(1995)後,「北海道旧土人保護法」が廃止され「アイヌ文化振興法」(1997)が制定された。
②性別による差別
 女子差別撤廃条約批准(1985)後,男女雇用機会均等法が制定され(1985),2008年には国籍法が改正された(婚姻していなくても父が認知すれば国籍取得できる)。また,女性のみに課される六カ月の再婚禁止期間(待婚期間)について,従来最高裁はこれを合憲としてきたが,科学技術が発達した現在,その合理性に疑問が呈されている。そしてついに最高裁は2015年12月16日,民法上の六カ月の待婚期間は100日を超える部分において違憲と判断した。さらに,夫婦別姓の問題も平等原則の観点から議論されている。夫婦別姓はいずれか一方の姓を名のる制度で男女間に形式的な不平等はないが,夫の姓を名のることが常態化していることや姓の強制的変更の問題性が問われている。
※夫婦別姓に対する最高裁2015年12月16日)の判断=合憲
*多数意見
 夫婦同姓の制度は我が国の社会に定着してきたもので、家族の呼称として意義があり、その呼称を一つにするのは合理性がある。
*反対意見①民法750条は,婚姻の際に,例外なく,夫婦の片方が従来の氏を維持し,片方が従来の氏を改めるとするものであり,これは、憲法24条1項にいう婚姻における夫婦の権利の平等を害する。
*反対意見②民法750条は,婚姻成立に不合理な要件を課したものであり婚姻の自由を定めた憲法24条に違反する。
③社会的身分・門地(家柄)による差別
 社会的身分とは,人が社会において一時的ではなしに有する地位のこと。親子関係や非嫡出子などの地位がこれにあたる。
*尊属殺重罰規定違憲判決(1973年)⇒尊属重罰規定を削除(1995年)
 この判決は,尊属規定を設けること自体は不合理ではなく,刑が重すぎる(死刑・無期のみ)から違憲としたものである。
*非嫡出子相続分違憲判決(2015年9月4日)⇒民法改正(2015年12月5日)
 非嫡出子相続分問題とは,非嫡出子(婚外子)の相続分は嫡出子(婚姻中に懐胎した子)の半分とするとした民法の規定は平等原則に反するのではないかという問題である。この問題について従来最高裁は法律婚の保護を理由に合憲と判断していたが,親の不倫のつけを何の責のない子どもに負わせるのは不当だとの批判が強かった。
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社会科散策(政治)論述№06-新しい人権 [政治]

4-1 基本的人権の保障①-新しい人権

1 一般的基本権(包括的人権)
⑴個人の尊重と幸福追求権(13条)
 すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

 プライバシー権,❷自己決定権は,「幸福追求権」(憲法13条)を根拠に,❸環境権は,13と25条(生存権)を根拠に,❹知る権利は21条(表現の自由)あるいは国民主権の原理(前文・第1条)を根拠に主張されている。

プライバシー権
 プライバシー権は,従来,新聞・雑誌などの大衆紙により有名人の私生活が暴露されたことなどから,「私生活がみだりに公開されない権利」(宴のあと事件)として主張された。しかし,情報社会の進展にともない,最近では「自己の情報をコントロールする権利」をも含めて捉えられるようになっている。その理由は,情報技術が発達し,個人情報が行政機関やマスメディアなどの企業に集中的に管理されている現代社会において,自己の情報が勝手に操作され,また流布される危険が生じてきたからである。
※個人情報保護法の制定(2003年)
※マイナンバー法(2013年制定,2016年開始)
⇒正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」

〔研究〕マイナンバー制度について,その①制度趣旨及び②適用分野について説明せよ。
〔解答〕①制度趣旨=行政の効率化,手続の簡素化(国民の利便性向上),国民年金の未納や生活保護不正受給防止などがその狙いとされている。②適用分野=現段階では,社会保障,税(国税),災害対策の3分野に適用が限定される。
(解説)
 マイナンバー制度は,将来その適用範囲が拡大していくと管理社会が極端にまで進展する恐れがある。例えば,病歴・犯罪歴,納税の延滞・脱税の有無,海外渡航記録,資産(不動産)など,あらゆる個人情報が政府の管理下に置かれることになる。ここまでくるとプライバシー権の侵害と言わざるを得ないが,テロなどの凶悪犯罪が増えてくると,情報管理を望む世論が形成されかねない危険がある。

自己決定権
 自己決定権とは,個人が自分の生き方や生活のしかたについて自由に決定できるとする権利である。同性婚,妊娠中絶・避妊の自由,尊厳死・安楽死などが自己決定権の内容として主張されている。その理由としては,都市化の進展,女性の社会進出の増大,医療技術の進歩などにより,個人の生き方の選択の幅が大きくなったことがあげられる。
※インフォームド・コンセント
*医師が患者に十分説明し理解させた上で,患者の自由意思によって治療の合意・拒否を決めることを意味する。これを欠いた治療は患者の自己決定権の侵害となり損害賠償事由となる。
※同性の婚姻届の是非
*渋谷区議会は2015年3月,同性カップルを婚姻に相当する関係と認める条例を制定した。
環境権
 環境権とは,健康で快適な生活のために良い環境(自然環境)を享受・支配する権利である。この環境権が提唱された理由は,高度経済成長期に公害が深刻化するとともに,環境破壊がすすんだからである。⇒環境アセスメント法,環境基本法(旧公害対策基本法)の制定。
知る権利
 知る権利とは,情報の受け手(国民)が,情報の送り手(政府・マスメディア)に対して,情報の提供を求める権利である。情報社会が進展するにともない,情報が国家やマスメディアに独占され,情報の相互交換による意思決定という表現の自由の本来の機能が損なわれてしまったことから,実質的に表現の自由を実現するべく唱えられたのが,新しい人権としての「知る権利」である。したがって,その根拠規定は憲法21条(表現の自由)に求められる(国民主権に根拠づける立場もある)。ただ,その内容は不明確でその具体化には法律の制定(情報公開法)が必要となる。
※アクセス権
 政府に対して情報を求める権利を情報公開請求権と言うのに対して,マス・メディアに対して自己の意見を掲載・放送するよう要求する権利をアクセス権という。いずれもその具体化には法律の制定が必要だが,アクセス権を具体化した反論権については否定的な見解が多い(最高裁も認めていない)。
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社会科散策(政治)論述№05-憲法改正・憲法尊重擁護義務 [政治]

3-4 日本国憲法の特色④

〔憲法改正〕(第96条)                         
❶この憲法の改正は,各議院の総議員の三分の二以上の賛成で,国会がこれを発議し国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行はれる投票において,その過半数の賛成を必要する。
❷憲法の改正について前項の承認を経たときは,天皇は,国民の名で,この憲法と一体を成すものとして,直ちにこれを公布する。

 日本国憲法の三つの基本原理,すなわち,国民主権・人権尊重・平和主義については,憲法改正できないと考えられている(憲法改正限界説)。なぜなら,これらは日本国憲法の本質的部分であり,その変更はもはや改正とはいえず,新憲法の制定にほかならないからである。したがって,憲法96条の手続で改正できるのは,当該3つの基本原理を損なわない場合ということになる。
 憲法改正の論点として,現在,知る権利やプライバシー権などの新しい人権の憲法への明記,首相公選制,一院制,道州制,軍隊などの導入ないし設置が問題となっている。
 なお,2007年に,「日本国憲法の改正手続に関する法律」(憲法改正手続法)が制定され,2010年5月18日に施行された。
〔研究〕憲法9条を改正して核兵器(大陸間弾道ミサイル)を装備することは可能か。
〔解答〕各自検討されたい。

〔憲法尊重擁護義務〕(第99条)
 天皇又は摂政及び国務大臣,国会議員,裁判官その他の公務員は,この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
〔研究〕日本国憲法第99条の憲法尊重擁護義務規定の中に「国民」の文言がないが,その理由を述べよ。類題(平成31年同志社高校)
〔解答例①〕そもそも国民が憲法をつくったのは,国家権力による人権侵害を抑制するためであり,憲法99条は国民の側から公権力を行使する公務員対して憲法を守る義務を課した規定だからである。
〔解答例②〕国民が自分で制定した憲法を尊重擁護するのは当たり前であり,国民の義務として規定する必要はなかったからである。
(解説)
 憲法99条に「国民」文言がないのは単なる脱漏ではなく,日本国憲法が近代的立憲主義思想に忠実だということを示す積極的な意味(あえて外した)を持っているからだと解する立場(樋口陽一)もある。すなわち,憲法99条の規定の仕方は,公権力の担い手に憲法尊重擁護義務を課す一方で,国民ひとりひとりにはどんなタブーも課さないという考え方を反映しているとする。
 なかなかの難問だが,「自分でつくったきまりを自分が守るのは当たり前だから」でも合格点は十分つくであろう。また,「日本国憲法は国民に憲法を破壊する自由をも認めているからである」と書いてもよい。尚,同志社高校の設問には,「日本国憲法が立憲主義の精神を基礎においた憲法であることを念頭において答えよ」とあり,難易度はより高い。この設問に対しては解答例①の内容を書く必要がある。
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社会科散策(政治)論述№04-天皇制 [政治]

3-3 日本国憲法の特色③

〔天皇制〕
①象徴としての天皇                           
 『天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』(第1条)
②国家機関としての天皇
 『天皇は,この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ,国政に関する権能を有しない』(第4条),『天皇の国事に関する行為には,内閣の助言と承認を必要とし,内閣が,その責任を負ふ』(第3条)。
《天皇の国事行為》
 次の天皇の国事行為はいずれも形式的・儀礼的行為で,その行為についての責任はすべて内閣が負う。
※第4条2項 
 国事行為を委任すること
※第6条1項・2項
①国会の指名に基いて内閣総理大臣を任命すること
②内閣の指名に基いて最高裁判所長官を任命すること
※第7条
①憲法改正,法律,政令及び,条約を公布すること
②国会を召集すること
③衆議院を解散すること
④国会議員の総選挙の施行を公示すること
⑤国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること
⑥大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証すること     
⑦栄典を授与すること
⑧批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること 
⑨外国の大使及び公使を接受すること
⑩儀式を行ふこと

〔研究〕日本国憲法はなぜ天皇を「象徴」と規定したのか。
〔解答例〕天皇が政治的権力をもたない象徴的な存在であることを印象づけるためである。
(解説)大日本帝国憲法下において,主権者である天皇は憲法に明記するまでもなく象徴でもあった。そこで日本国憲法が天皇を象徴と明記したのは,天皇が政治的権能を有しない存在であることを表明したものと捉えることができる。

〔研究〕天皇の「国会開会式のおことば」,外国親善訪問,外国元首の応接といった公的な行為は憲法4条・7条に違反しないか。
〔解答〕天皇の象徴としての地位に基づく公的行為として認めるのが妥当である。
(解説)合憲説の理由付けとしては,象徴行為説のほかに,私的行為説,国事行為拡張説(儀式に含まれる)などがある。違憲説(国事行為限定説)もある。

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社会科散策(政治)論述№03-日本国憲法の特色② [政治]

3-2 日本国憲法の特色②

〔平和主義〕
 日本国憲法は,徹底した平和主義をとりいれ,前文に平和の決意を宣言し,第9条でその具体化をはかっている。
※前文第2段
 日本国民は,恒久の平和を念願し,人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって,平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われらの安全と生存を保持しようと決意した。 
※第9条(戦争放棄)
❶日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。
❷前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。

<第9条の論争点>-〔政府見解〕
〔論点Ⅰ〕第9条は自衛戦争も放棄しているのか。⇒「国際紛争を解決する手段として」の戦争には,侵略戦争のほかに自衛戦争も含まれるのか。「前項の目的」とは何か。
 自衛戦争放棄説(1項放棄説と2項放棄説がある)と非放棄説(「前項の目的」を「国際紛争を解決する手段としては」に限定する)が対立する。9条2項放棄説が多数説。政府見解もこの多数説に与するとされているが,交戦権の意味を限定しておりその立場は明確ではない。
〔論点Ⅱ〕自衛隊は「戦力」ではないのか。
 自衛のためであっても,あらゆる「戦力」の保持は禁止されているとする一方,ここにいう「戦力」にいたらない程度の,自衛のための最小限度の実力の保持は認められるとしている。そして自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力にとどまっているため,9条の「戦力」にはあたらないとする。
 「必要最小限度の実力」の意味については,その時々の国際情勢や軍事技術の水準等によって変化するとされ,従って,核兵器でさえ,防衛的な性格を持つものであれば憲法上,保持を禁止されているわけではないとしている(現在,日本が核兵器を持たないのは,非核三原則等の政策決定によるものにすぎないとする)。
〔論点Ⅲ〕「集団的自衛権」の行使は可能か。
 日本政府は従来,集団的自衛権(日本政府と密接な関係にある他国が武力攻撃を受けた場合,それを日本への攻撃とみなして共同して防衛にあたる権能)については,保有しているが,その行使は憲法上できないとしてきた。そこで,日米安保条約の効果的な運用への寄与をはかることを目的とする周辺事態法も直接戦闘行為が行われることのない「後方地域」に限り,また,支援の一環としての「物品の提供」は弾薬等の「武器の提供」を含まないものとして許容してきたのである。
 ところが,2014年7月安倍内閣は閣議決定で解釈を変更し,翌年(2015年9月19日),集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法が成立した。即ち,①日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され,日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態(存立危機事態)で,②我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がない場合は,③必要最小限度の実力行使であれば,集団的自衛権による武力行使は憲法9条のもとでも可能であるとした。
〔研究〕「集団的自衛権」とはどのような権利か,説明しなさい。類題(2017年大阪教育大附属池田)
(解答)上記参照。
※最高裁の判断
 最高裁は,駐留米軍については「戦力」にはあたらないとしたが,自衛隊については,違憲とも合憲とも判断していない。また,自衛戦争および自衛ための戦力保持についても判断を留保(回避)している。
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社会科散策(政治)論述№02-日本国憲法の特色① [政治]

3-1 日本国憲法の特色①

⑴国民主権
 国の政治のあり方を最終的に決める力および権威を主権という。国民主権とは,この主権が国民にあることを意味している。日本国憲法は,その前文と第1条に国民主権を明記している。国民主権を具体化する方法として,❶間接民主制と❷直接民主制がある。

原則としての間接民主制
 前文第1段
 「日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し,…そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって,その権威は国民に由来し,その権力は国民の代表者がこれを行使し,その福利は国民がこれを享受する。」
 第43条第1項
 両議院は,全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
例外としての直接民主制 
①最高裁判所裁判官に対する国民審査(第79条)              
②地方自治特別法についての住民投票(第95条)              
③憲法改正の要件としての国民投票(第96条) 
       
⑵基本的人権の尊重と権力分立                           
 基本的人権の尊重とは,人が生まれながらに有する権利は最大限に尊重されなければならないということである。日本国憲法は,基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」(11条)とし,また,❶「すべて国民は,個人として尊重される」(13条)と定めて,基本的人権の尊重を基本原理とした。その基本的人権を国家権力の濫用から守るために,❷国家権力の作用を立法権・行政権・司法権の3つに分離し,相互に権力の抑制と均衡をはかる統治機構(権力分立)が採用されている。

❶国家や民族を優先する全体主義ではなく,個人に究極の価値をおく個人主義の採用を表明した規定である。
❷日本国憲法の採用した権力分立の統治機構は,アメリカのような厳格分離ではなく,三権が相互依存関係にあり,とくに議院内閣制のもとで国会と内閣はより緊密な関係となっている。

〔研究〕ファシズム国家において個人の権利はどのような考えのもとで,どのように扱われたか。民主主義国家における個人の権利の扱い方との違いをふまえて説明しなさい。類題(2017年大阪教育大附属池田出題)
[解答]民主主義国家では,個人の権利は平等に保障されるとの考えのもとに,個人の権利は個人間の利害調整といった正当な理由がなければ制限できないとされる。これに対し,ファシズム国家では,個人よりも国家の利益が優先するとの考えのもとで,個人の権利は国益という漠然とした理由で強制的に剥奪・制限された。
(解説)
 ファシズムの定義は明確ではないが,以下の特徴を有する。①自由主義・共産主義の否定,②一党独裁体制(議会制の否定),③経済統制,④軍事力による市場拡大。その代表例が,イタリアのファシスト党やナチス・ドイツの一党独裁体制。なお,ソ連のスターリンによる共産党一党独裁も全体主義体制でありファシズムと同様の特徴を有している。
 本問は,全体主義と個人主義の違いを問う難問である。出題者は,「これに適切に答えられる受験生(中学生)がどれだけいるのだろうか。受験生の実際の答案を見てみたい。」という思い(興味)で出題したのであろう。

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社会科散策(政治)論述№01-憲法とは [政治]

1 憲法とは何か。
                     
 憲法は❶国の基本法であるとともに❷国民の権利や自由を守るという重要な役割を担っている。従って,憲法に反する法律や命令をつくることは許されず,国の法体系は❸憲法を頂点として形成される。

イギリスでは,「~憲法」という名称をもった法は存在しない。マグナカルタをはじめ,権利章典のような制定法や判例の集積により成立した判例法がイギリスの憲法となっている。
フランス人権宣言は,『すべて権利の保障が確保されず,権力分立が定められていない国家は憲法を有しない』(16条)と規定している。つまり,国家権力を制限して国民の権利や自由(人権)を守ることを目的としない憲法は近代的な憲法ではないと言っている。
憲法の種類
①成文憲法と不文憲法‥成文の法典が存在するか否かの区別。日本やアメリカは成文憲法の国であるのに対し,イギリスは不文憲法の国。
②硬性憲法と軟性憲法‥通常の法律の改正より手続が厳格か否かによる区別。日本国憲法は硬性憲法。(憲法96条参照)
③欽定憲法と民定憲法‥憲法制定主体による区別。大日本帝国憲法は欽定憲法,日本国憲法は民定憲法。

〔研究〕日本国憲法は大日本帝国憲法の改正手続により制定された。とすると,大日本帝国憲法と同様に欽定憲法ではないのか。
〔解答〕ポツダム宣言の受諾によって日本は天皇主権から国民主権への転換がなされた。従って,日本国憲法は主権者たる国民が制定した民定憲法であり,改正手続によったのは政治的混乱を防止するための便宜に過ぎない(いわゆる8月革命説による説明)。

2 日本国憲法の制定

 ポツダム宣言受諾後,連合国軍総司令部(GHQ)の作成した案(マッカーサー草案)をもとに憲法改正作業が進められた。その改正案は帝国議会で審議され,1946年11月3日に日本国憲法として公布され,翌年5月3日から施行された。
                            
〔研究〕現憲法の制定過程において,日本政府が作成した当初の憲法改正案が総司令部(GHQ)に受け入れられなかったのはなぜか。
〔解答〕政府案(松本案)は,明治憲法と同様に天皇主権を残すなど民主的な憲法とはいえなかったからである。 
(解説)憲法問題調査委員会(いわゆる松本委員会)が起草した憲法改正草案は,大日本帝国憲法の若干の修正にとどまるもので,全面的改変を意図していた総司令部の方針とは相いれなかった。そこで総司令部は,いわゆる「マッカーサー三原則」をもとにみずから草案作成に着手した。
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