SSブログ

社会科散策(政治)論述№18-国際連合 [政治]

5-2 国際政治②-国際連合

⑴国際連合の成立
 二度の世界大戦を起こした反省から,国際平和の維持と国際協調を目的として創設された国際機構が国際連合。1945年10月に,連合国を中心に51カ国で発足し,現在では,ほとんどの独立国が加盟している。

⑵国際連合のしくみ
 国際連合の本部はニューヨークにあり,❶総会,❷安全保障理事会,❸経済社会理事会,❹信託統治理事会,❺国際司法裁判所,❻事務局の主要機関からなる。

❶総会
 国連のすべての加盟国が参加し,原則として年一回開催。主権平等の原則に基づいて,総会では1国1票の多数決で決定される。ただ,重要事項は3分の2の特別多数決で決定される。
※重要事項(平和と安全に関する勧告,新加盟国の承認,予算事項など)
※平和のための結集決議(1950年)
 米ソ対立により,安全保障理事会で拒否権が乱発され,国連憲章の理念が生かされない状態に陥ったため,安保理に代わって,総会が平和維持の機能を果たすための勧告権(武力行使を含むが拘束力はない)を持つことができるようになった。
❷安全保障理事会
 国際平和と安全の維持を目的とする機関で加盟国は安全保障理事会の決議に従う義務がある。アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国の5常任理事国と,2年の任期で選挙される10非常任理事国の合計15カ国で構成される。表決は原則として多数決(9カ国以上の賛成)で行われるが,手続事項を除く実質事項については,常任理事国に拒否権が認められている(常任理事国を含む9カ国以上の賛成)。安全保障理事会は,必要な場合には,経済制裁や軍事的な強制措置をとることができる。

〔研究〕安保理改革の必要性について。 類題(お茶女附属平成29年度出題)
 2005年の国連首脳会合で,安全保障理事会を早期に改革すべきであるという合意が成立したが,なぜ改革が必要なのか,その理由を2つ説明せよ。
(解答)①安保理構成国を増加させその地域バランスを図ることにより,意思決定の正当性を維持する必要があるから。
②紛争地域の拡大など国際情勢の変化に対応するためには,その解決に大きな影響力を有する国々の参加が必要だから。
(解説)
 外務省のHPには,国連加盟国が国連創設時の4倍近くまで増えたにも関わらず,安保理議席数にはほとんど変化がないこと,及びアフリカからの選出が少ないといった問題意識から,「2005年の国連首脳会合では安保理の代表性、効率性および透明性をより向上させ、またその実効性、正当性および安保理の決定の実施を強化するため、安保理を早期に改革すべきである旨が合意されました」とある。
 やや難しい言い回しだが,要するに,国連加盟国数が増えたのだから安保理選出国数も増やさないと安保理の意思決定に対する各国の納得(正当性)が不十分になるということ,そして,常任理事国の構成も国際情勢の変化にともないより実効あるものに変えていく必要があるということである。
 世界大戦は勢力均衡論の下で各国が軍拡を図り軍事同盟を結んだことが原因だとして,集団安全保障の考えにより創設されたのが国際連盟や現在の国際連合である。集団安全保障というのは,国際社会のルールに則り加盟国が結集して国際紛争を抑止しようとする安全保障体制である。しかし,国内政治のような統一権力を欠く国際政治のもとでは,国際ルールを設定して各国の主権を制限することはとても難しい。国連が有効に機能するためには,勢力均衡や大国の指導力(覇権)は無視できないのである(第一次世界大戦は勢力均衡の破綻の結果であり,国際連盟の失敗は大国(アメリカ)の不参加が原因であった)。

❸経済社会理事会
 経済・社会,文化・教育,人類の福祉などに関する国際問題を研究・勧告する機関で,総会選出の54カ国で構成される。国連の多くの専門機関がこの経済社会理事会に属している。
❹信託統治理事会
 住民が自立できず信託統治下にある地域の向上と独立の援助をはかることを目的とする機関。しかし,信託統治領は現在は存在せずその役割は終了している。
❺国際司法裁判所
 国家間の法律的紛争を裁判する国連の機関で,本部はオランダのハーグにある。当事国の同意がなければ裁判を始めることができない。
※竹島問題
 島根県の竹島問題で,韓国政府が国際司法裁判所への共同付託に応じなかったことから,日本政府は国際司法裁判所への単独提訴を検討していた。しかし,韓国が提訴に応じない以上,国際司法裁判所による解決は困難である。 
❻事務局
 国連が決めた計画や政策を実施する機関。その長である国連事務総長は,国際平和をおびやかす事項については安全保障理事会の注意を促すことができる。また,国際紛争の際には,その解決のために各国と折衝をするなど重要な役割を果たしている。従って,出身国や個人的利益のために行動したり,対立する国の一方に加担するような行動は許されない。
※国連事務総長(任期は5年だが2期10年が慣行となっている)
*歴代国連事務総長
 ①トリグブ・リー(ノルウェー)        1946~1952年
 ②ダグ・ハマーショルド(スウェーデン)   1953~1961年
 ③ウ・タント(ビルマ,現ミャンマー)      1961~1971年
 ④クルト・ワルトハイム(オーストリア)   1972~1981年
 ⑤ハビエル・デクエヤル(ペルー)     1982~1991年
 ⑥ブトロス・ガリ(エジプト)          1992~1996年
 ⑦コフィー・アナン(ガーナ)          1997~2006年
 ⑧潘基文(韓国)                2007~2016年
 ⑨アントニオ・グテーレス(ポルトガル)  2017年~ 
*国連事務総長の選出方法
 事務総長の選出方法について,国連憲章は「安全保障理事会の勧告に基づいて総会が任命する」と規定している。しかし,事務総長の選出も常任理事国の拒否権の範囲に含まれることから,いずれの大国にも支障のない人物が安保理の「密室」で選ばれてきた。そこで選出方法の透明性をはかるため,国連総会は2015年9月,事務総長候補者のヒアリングを行うことなどを盛り込んだ決議案を採択した。

⑶国際連合の活動
①平和と安全の維持
 国際連合憲章は,「武力による威嚇または武力の行使」禁じ,国際紛争を平和的手段によって解決することを定めている。これに違反する国に対しては,加盟国全体で制裁措置をとるという集団安全保障を掲げている(国連軍の派遣も可能だが,これまで正式に国連軍が組織されたことはない)。また,紛争の拡大を防ぐために,平和維持活動(PKO)を行い,地域紛争の解決にあたっている。
②生活向上のための国際協力
 国連は,経済社会理事会と連携協力している専門機関や総会の特別機関を中心に,開発途上国への援助(UNCTAD)・資金供与(IBRD),為替の安定・貿易の促進(IMF)などの経済対策のほか,発展途上国の児童の援助(UNICEF),難民の保護・救済(UNHCR),地球環境の保護活動(UNEP),人口問題(UNFPA),感染症の撲滅(WHO)などさまざまな国際問題にとりくんでいる。

〔研究〕経済社会理事会と連携協力する国連の専門機関のうち,世界銀行ともよばれ開発途上国への資金供与などを行なっている機関をアルファベットで答えよ。
(解答)IBRD
(解説)専門機関には国際労働機関(ILO),国連教育科学文化機関(UNESSCO),国際通貨基金(IMF),国際復興開発銀行(IBRD),世界保健機関(WHO)など17の機関がある。ほかに,総会が設置した特別機関に,国連貿易開発会議(UNCTAD),国連児童基金(UNICEF),国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連大学(UNU),国連環境計画(UNEP),国連人口基金(UNFPA)などがある。

〔研究〕国連の機関 類題(お茶女附属平成27年度)
①国連教育科学文化機関をアルファベットで答えなさい。
②国連難民高等弁務官事務所の高等弁務官を1991年から2000年の間つとめた日本人は誰か,答えなさい。⇒緒方貞子
③国連の軍事参謀委員会とテロ対策委員会は国連のどの主要機関の補助機関か,答えなさい。⇒安全保障理事会

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。