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社会科散策(経済)論述№01-資本主義経済とその変容 [経済]

1-1 資本主義経済 
1.生産・消費・流通
 ❶財とサービスを生産・消費し,❷それを支える活動を経済活動という。
❶商品のうち,形をなすものを財といい形のないものをサービスという。
※財には,生産に使う生産財と生活に使う消費財がある。
❷金銭等をなかだちとする商品の流れを流通という。

2.市場経済
 ❶市場を通して商品の種類や値段,質や量などが決められる。この経済のしくみを❷市場経済という。
❶市場とは,消費者が生産者や流通業者と商品をなかだちにして出会う場のこと。
❷市場経済においては,人びとは消費量,生産量を自由に決めることができ,そのために売れ残りや品不足が生ずる場合がある。売れ残る場合には価格が下がることにより生産が減少し,品不足の場合には価格が上がることにより消費が減少することになる。

3.資本主義経済
 ❶資本主義経済の特徴は❷私有財産制・経済活動の自由と❸市場経済である。
❶近代資本主義は18世紀後半にイギリスから起こった産業革命(機械制大工業)を通して成立した(資本主義の初期形態はマニュファクチュア=工場制手工業)。
❷生産のための土地や工場などの生産手段が私的に所有され,財・サービスが商品として自由に売買される経済である。
❸この資本主義経済では,限りある資源は市場における需給関係を通して最適に配分される。生産活動が計画的に行なわれる社会主義経済と対照的である。
※社会主義経済
 社会主義経済とは「生産手段の私的所有を改めて人々の共同所有とし,生産活動を私的企業の営利活動から解き放って社会化しようとする思想と運動」(東京書籍政治経済)のことである。なかでもマルクスの社会主義思想は後世に大きな影響をあたえ,20世紀前半,ソ連・東欧をはじめとする社会主義政権が誕生した。
〔研究〕資本主義経済の特徴をあげなさい。
〔解答〕私有財産と経済活動の自由(営業の自由)が認められ,需要と供給により限りある資源が適正配分されることがその特徴である。
(解説)
 私有財産の保障と経済活動の自由だけでもよい。また,生産手段(土地と工場)の私的所有や需要と供給による価格決定としてもよい。  

4.資本主義経済の発展とその弊害
 資本主義経済は,❶自由放任主義のもと生産力を飛躍的に発展させたが,その反面,❷種々の弊害をもたらした。
❶アダム・スミスの自由放任主義(19世紀)
 アダム・スミスは,その著『諸国民の富(国富論)』(1776)のなかで,個人が利己心を発揮して活動すれば「見えざる手」により社会全体の調和がとれ,全体の利益も増大すると述べ,政府は経済活動に干渉しないほうがよいと説いた。このアダム=スミスの自由放任主義は,当時の市民階級(産業資本家)の経済思想として受け入れられた。
❷資本主義経済の発展に伴う種々の弊害
①周期的に発生する恐慌。
 企業の自由競争は商品の生産過剰を生み出し,急激な景気変動をもたらした。
②独占・寡占企業の出現。
 一部の巨大企業が市場を支配するようになると,市場メカニズム(見えざる手)が有効に機能しなくなる。
③貧富差の拡大。

5.資本主義経済の変容
 20世紀に入ると,資本主義経済は世界恐慌を契機に大きく変容を遂げ,❶資本主義各国は景気回復と失業者救済のために,❷積極的な経済政策をとりはじめた。
❶アメリカのニューディール政策(1933~39年)
 フランクリン・ローズベルト大統領による不況対策。ニューディールとは「新規まき直し」という意味。テネシー川流域開発公社(TVA)の設立をはじめ,各種の失業対策・農民対策を行なった。
❷修正資本主義(混合経済)
 イギリスの経済学者ケインズは,アダム=スミスの自由放任主義を批判し,「有効需要の原理」(後述)により政府の経済への介入の必要性を説き,戦後,世界の先進資本主義国は,このケインズの主張に沿った政策をとるようになった(ニューディール政策もケインズ理論によるものと理解されているが,どっちが先かは微妙である)。
※小さな政府への回帰(新自由主義)-ケインズ批判
 しかし,政府の経済への介入は,「大きな政府」を生み出し,行政機構の肥大化や非効率的な経済運営をもたらした。そこでまた,市場メカニズムの活用の主張や「小さな政府」論が展開されるようになり,1980年代のレーガン政権(米),サッチャー政権(英)や2000年代のブッシュ政権(米),小泉政権(日)はその「小さな政府」を実践した。
※大きな政府の復権
 ところが,2008年にアメリカで起きた金融恐慌は,ブッシュ政権(米)の下で,規制撤廃や金融商品の証券化がグローバルな規模で行われた結果であるとして,その行き過ぎに警戒する動きが出ている。日本でも,規制緩和や民営化が格差社会をもたらしたとの批判が噴出した。そこで,また,「大きな政府」の主張が勢いを増している。


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社会科散策(政治)論述№20-環境問題 [政治]

5-4 国際政治④-環境問題
 先進国の大量消費,途上国の工業化・乱開発などの影響で,地球の環境破壊が深刻な問題になってきた。

 フロンガスによる❶オゾン層破壊(紫外線による皮膚ガン),化石燃料による❷酸性雨の発生(森林破壊),人口増加にともなう過耕作・過放牧による❸砂漠化,二酸化炭素(CO2) などの温室効果ガスによる❹地球温暖化,❺放射能汚染,❻環境ホルモン。

❶南極のオゾン層破壊(現在オゾンホールは縮小傾向にあるとされている。その理由は不明である)
❷酸性雨(ヨーロッパやアメリカ東部,中国東部など)
❸砂漠化(アフリカのサヘル,中国内陸部,中央アジアなど)
❹地球温暖化 
 温室効果ガス(二酸化炭素のほか,メタンやフロンなど)が原因とされている。
※CO2放出国(中国・アメリカ・ロシア)は,温暖化対策をしていない。
※温暖化問題は政治利用の側面も強い。膨大な対策費(税金)を出す前に精密な科学的論証が必要であろう。
❺放射能汚染(核実験,チェルノブイリ原発事故や東日本大震災の津波による福島原発事故)
❻環境ホルモン 
 ダイオキシン,PCB,DDTなど。⇒遺伝子レベル特に生殖機能への影響が言われているが十分解明されているわけではない。ダイオキシンについては,現在,その毒性はかなり低いと考えられている。
※日本では,これまで小中学校のゴミ焼却炉の撤廃,焚き火禁止,細かいゴミの分別,マイ箸(割り箸追放)・マイバッグ・マイカップ・マイストローなどと過敏・過剰な対応がなされてきた。

※環境会議の経緯(各国の思惑・利権がからみ温暖化対策の足並みは揃っていない)
*国連人間環境会議(1972年,スウェーデンのストックホルム)
 「かけがえのない地球」を守るために,国連を中心に各国が協力する体制がつくられた。
*国連環境開発会議(1992年,ブラジルのリオデジャネイロ)~地球サミット
 「持続可能な開発」の実現をめざす世界的な枠組みがまとめられ,二酸化炭素の排出量を抑制する地球温暖化防止条約が結ばれた。
*COP3=第3回気候変動枠組条約締約国会議(1997年,京都)~地球温暖化防止京都会議
 161 カ国が参加して「温室効果ガス」の削減数値を盛り込んだ京都議定書が採択された(アメリカは離脱)。
*持続可能な開発に関する世界首脳会議(2002年,ヨハネスブルク)~環境開発サミット
 「地球サミット」(1992年)で決めた行動計画の具体策をまとめるため191 カ国・地域の代表が集まった。しかし,具体的成果は得られなかった。
*COP21(2015年12月,パリ)
 京都議定書に代わる地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」を採択(条約に加盟する196カ国・ 地域が参加)。「産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える」という国際目標と,「1.5度未満」の努力目標を明記。さらに,「今世紀後半には排出を実質ゼロにする」とした。
 目標達成の義務化は見送られたが,すべての国に自主的に削減目標を作成し(国連に提出),対策をとることを義務付けた(実施状況の報告と目標の5年ごとの見直しを義務化)。
 先進国の開発途上国への資金支援は,目標額を協定そのものには盛り込まず,法的拘束力のない別の文書に「2025年までに年間1000億ドルを下限として設定する」とした。
※ 2017年に「パリ協定」からの離脱を表明していたアメリカのトランプ大統領は、2019年11月5日,離脱を正式に国連に通告した(2020年11月4日に正式な離脱となる)。

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社会科散策(政治)論述№19-冷戦~終結後,軍縮の歩み [政治]

5-3 国際政治③-冷戦,多極化,第三世界,軍縮

⑴二つの世界(冷戦体制)
①西側陣営(資本主義陣営)
 戦後,アメリカは西欧諸国への大規模な復興援助計画(マーシャルプラン)を実施するとともに,1949年,西欧諸国およびカナダとの間に,北大西洋条約機構(NATO)を結成して共産圏の封じ込めをはかった。
②東側陣営(社会主義陣営)
 ソ連は,経済相互援助会議(COMECON)を設立し,1955年にはワルシャワ条約機構を東欧諸国との間で結成した。
※鉄のカーテン
 英首相チャーチルは,1946年の訪米中の演説で「北はバルト海(シュテッティン)から,南はアドリア海(トリエステ)に至るまで鉄のカーテンがおろされている」とソ連の厳しい封鎖線を皮肉った。
 
 東西陣営が対立する冷戦下で,❶東西ドイツ,❷南北朝鮮,❸南北ベトナムといった分断国家が生まれ,また,冷戦終結まで米ソ対立を反映した❹代理紛争が展開された。

❶戦後ドイツは,西側(米英仏の共同管理)と東側(ソ連)に分断された。ベルリンも東西に分断され,西ベルリンにはソ連によりベルリンの壁(1961~89)が構築された。東西ドイツの統一は1990年。
❷1945年,北緯38度線を暫定的境界として南を米軍が北をソ連軍が占領した。そして1948年,南に大韓民国(初代大統領李承晩)北に朝鮮民主主義人民共和国(初代首相金日成)が成立した。
❸1945年9月にベトナム民主共和国(初代大統領ホー・チ・ミン)が成立。第1次インドシナ戦争後ジュネーヴ休戦協定が結ばれ(1954),北緯17度線が暫定境界線とし,56年7月に南北ベトナム統一選挙を実施することが定められた。しかし,1955年10月アメリカの支援を受けたベトナム共和国が成立し,ベトナムは南北に分断した。
❹朝鮮戦争(1950~53),ベトナム戦争(第二次インドシナ戦争1965~73),ソ連のアフガン侵攻(1979)など。

⑵緊張緩和(雪解け)
 1955年,❶米・ソ・英・仏の4巨頭によるジュネーブ会談が開かれ,国際政治は❷緊張緩和(雪解け)に向かった。

❶具体的成果は得られなかったが話し合いの機運が高まった。
❷緊張緩和(デタント)
 米ソ間の核兵器による恐怖の均衡が成立したこと,また,非同盟諸国を中心に,平和共存を求める声が強まったこと,さらに,1953年のスターリンの死後,ソ連で平和共存を重視する政策の転換が行なわれたことがその要因としてあげられる。
 1962年にキューバ危機がおこり,米ソの対立は最高潮に達したが,これを教訓に米ソ間にホットラインがしかれるなど,対決を回避する空気が強まった。そして,翌年には,米・英・ソ間に部分的核実験禁止条約が締結されるに至った。

⑶二極化から多極化へ
 緊張緩和とともに両陣営の結束がしだいにゆるみ,独自の立場をとる国が現れてきた。社会主義陣営では,1950年代半ば中ソ論争(社会主義の路線対立)が展開され,1960年代末に中ソ国境紛争にまで発展した。また,東欧諸国においても,ソ連からの自立をめざす動きが現れてきた(ハンガリー事件1956年,チェコ事件1968年)。
 資本主義陣営では,フランスが1960年に核兵器を所有し1964年には中国と国交を樹立するなど独自の外交を展開した(1966年にはNATO脱退)。また,西欧諸国や日本は経済成長を遂げて国際競争力を強めていった。

〔研究〕(中ソ対立)

 中ソ対立の原因と米中接近の経過について説明せよ。

〔解答〕 1956年2月にソ連がスターリン批判を展開したこと,及びアメリカとの平和共存路線をとったことに対して,中国はソ連を修正主義と非難した。1969年には中ソ国境で武力衝突がおこるなど対立がエスカレートしたことから,毛沢東は危機回避のためアメリカに接近した。ベトナム戦争の打開を模索していたアメリカもこれに応じ,中国との関係改善に乗り出した。1972年,ニクソン大統領が訪中し米中首脳会談が実現した。


⑷第三世界
 アジア・アフリカの新興諸国は,発言力を強めるために,「第三世界」として結束し,東西いずれの陣営にも属さない立場(非同盟主義)を表明した。1955年のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)では,植民地主義反対,民族自決主義,平和共存などの平和十原則が採択された。
 また,これらの新興国は経済的にもその自立を図ろうと,国連貿易開発会議(UNCTAD)や国連総会を舞台に南北問題の解決にあたってきた。しかし,近年では開発途上国間でも,資源を持つ国と持たざる国,工業化に成功した国と経済が停滞する国とで格差が広がったり,開発途上国間での対立も問題(南南問題)となっており,開発途上国同士の結束はむずかしくなっている。

⑸冷戦終結とその後
 1985年に成立したソ連のゴルバチョフ政権は,ペレストロイカといわれる改革政策を進めるとともに,いろいろな立場に柔軟に対応する「新思考外交」を展開した。このソ連の変化を背景に,東欧諸国では政治的民主化を求める運動が急速に広まり,共産党による一党独裁体制が次々に倒されていった。そしてついに,1989年末,地中海のマルタでの米ソ首脳会談で冷戦終結宣言がなされた。
 冷戦終結後,ヨーロッパでは,1990年10月東西ドイツが統一された。また,1991年末にはソ連が消滅し新たに独立国家共同体が成立した。アジアでは,1990年にソ連と韓国の国交が樹立され,1991年には韓国と北朝鮮の国連同時加盟が実現した。また,1992年には中国と韓国の国交が樹立された。
 一方,冷戦終結とともに,民族対立や宗教対立が噴出し,地域紛争が各地で展開されるようになった(ユーゴ紛争,チェチェン紛争,アフリカのルワンダやスーダンの内戦など)。また,最近ではイスラム原理主義勢力(IS)によるテロとの戦いが先鋭化している。

〔研究〕冷戦後の地域紛争 類題(お茶女附属平成29年度)
 冷戦終結が地域紛争に与えた影響について説明せよ。
(解答)ソ連崩壊によりソ連からの独立の動きや抑圧されていた民族間の対立が表面化し,また両大国からの軍事・経済支援の撤退により内部の主導権争いや利権対立が先鋭化した。
(解説)
 この問題を解答するためには,具体的な地域紛争を念頭におく必要があるとともにその原因を理解しておく必要がある。超難問である。具体的な地域紛争としては,チェチェン紛争(ロシアからの独立=ソ連への怨念),ユーゴ紛争(チトー後のさらなる民族対立の激化),アフリカ内戦(利権争い),ソ連のアフガン侵攻⇒ソ連軍の撤退⇒タリバン政権⇒ISの成立などを念頭におけばよい。

⑹軍縮へのあゆみ
①1963年,部分的核実験禁止条約(PTBT)を米・英・ソ間で締結。
②1968年,新たに核兵器保有国の出現を阻止する核拡散防止条約(NPT))が国連総会で採択され1970年に発効。
③1987年,中距離核戦力全廃条約(INF全廃条約)が米ソ間で調印され翌年発効。
④1991年,戦略兵器削減条約(STARTⅠ)が米ロ間で調印された(但し,93年に米ソ間で調印したSTARTⅡは未発効)。
⑤1996年,地下実験を含むすべての核爆発実験を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)が国連総会で採択された(未発効)。
⑥1997年,対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)が締結され’99年に発効。
⑦2010年,米ロ間で新STARTが調印された(’11年発効)。
 しかし,1998年にはNPTに加盟していないインドとパキスタンが核実験を行い,2003年にNPTを脱退表明した北朝鮮が2006年に核実験を行うなど,核拡散が完全に防止されているとは言いがたい状況である。  

〔研究〕核兵器保有国 類題広島大附属高校2017
 核拡散防止条約(NPT)を締約せず核兵器を保有している国を3つ答えよ。
(解答)インド,パキスタン,イスラエル
(解説)北朝鮮も核兵器を保有していると推測される。また,2003年にNPT脱退表明をしている。ただ,この脱退表明は北朝鮮の一方的表明であり,国際的にその脱退が承認されているわけではない。したがって,北朝鮮を解答にあげるのは妥当でない。


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社会科散策(政治)論述№18-国際連合 [政治]

5-2 国際政治②-国際連合

⑴国際連合の成立
 二度の世界大戦を起こした反省から,国際平和の維持と国際協調を目的として創設された国際機構が国際連合。1945年10月に,連合国を中心に51カ国で発足し,現在では,ほとんどの独立国が加盟している。

⑵国際連合のしくみ
 国際連合の本部はニューヨークにあり,❶総会,❷安全保障理事会,❸経済社会理事会,❹信託統治理事会,❺国際司法裁判所,❻事務局の主要機関からなる。

❶総会
 国連のすべての加盟国が参加し,原則として年一回開催。主権平等の原則に基づいて,総会では1国1票の多数決で決定される。ただ,重要事項は3分の2の特別多数決で決定される。
※重要事項(平和と安全に関する勧告,新加盟国の承認,予算事項など)
※平和のための結集決議(1950年)
 米ソ対立により,安全保障理事会で拒否権が乱発され,国連憲章の理念が生かされない状態に陥ったため,安保理に代わって,総会が平和維持の機能を果たすための勧告権(武力行使を含むが拘束力はない)を持つことができるようになった。
❷安全保障理事会
 国際平和と安全の維持を目的とする機関で加盟国は安全保障理事会の決議に従う義務がある。アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国の5常任理事国と,2年の任期で選挙される10非常任理事国の合計15カ国で構成される。表決は原則として多数決(9カ国以上の賛成)で行われるが,手続事項を除く実質事項については,常任理事国に拒否権が認められている(常任理事国を含む9カ国以上の賛成)。安全保障理事会は,必要な場合には,経済制裁や軍事的な強制措置をとることができる。

〔研究〕安保理改革の必要性について。 類題(お茶女附属平成29年度出題)
 2005年の国連首脳会合で,安全保障理事会を早期に改革すべきであるという合意が成立したが,なぜ改革が必要なのか,その理由を2つ説明せよ。
(解答)①安保理構成国を増加させその地域バランスを図ることにより,意思決定の正当性を維持する必要があるから。
②紛争地域の拡大など国際情勢の変化に対応するためには,その解決に大きな影響力を有する国々の参加が必要だから。
(解説)
 外務省のHPには,国連加盟国が国連創設時の4倍近くまで増えたにも関わらず,安保理議席数にはほとんど変化がないこと,及びアフリカからの選出が少ないといった問題意識から,「2005年の国連首脳会合では安保理の代表性、効率性および透明性をより向上させ、またその実効性、正当性および安保理の決定の実施を強化するため、安保理を早期に改革すべきである旨が合意されました」とある。
 やや難しい言い回しだが,要するに,国連加盟国数が増えたのだから安保理選出国数も増やさないと安保理の意思決定に対する各国の納得(正当性)が不十分になるということ,そして,常任理事国の構成も国際情勢の変化にともないより実効あるものに変えていく必要があるということである。
 世界大戦は勢力均衡論の下で各国が軍拡を図り軍事同盟を結んだことが原因だとして,集団安全保障の考えにより創設されたのが国際連盟や現在の国際連合である。集団安全保障というのは,国際社会のルールに則り加盟国が結集して国際紛争を抑止しようとする安全保障体制である。しかし,国内政治のような統一権力を欠く国際政治のもとでは,国際ルールを設定して各国の主権を制限することはとても難しい。国連が有効に機能するためには,勢力均衡や大国の指導力(覇権)は無視できないのである(第一次世界大戦は勢力均衡の破綻の結果であり,国際連盟の失敗は大国(アメリカ)の不参加が原因であった)。

❸経済社会理事会
 経済・社会,文化・教育,人類の福祉などに関する国際問題を研究・勧告する機関で,総会選出の54カ国で構成される。国連の多くの専門機関がこの経済社会理事会に属している。
❹信託統治理事会
 住民が自立できず信託統治下にある地域の向上と独立の援助をはかることを目的とする機関。しかし,信託統治領は現在は存在せずその役割は終了している。
❺国際司法裁判所
 国家間の法律的紛争を裁判する国連の機関で,本部はオランダのハーグにある。当事国の同意がなければ裁判を始めることができない。
※竹島問題
 島根県の竹島問題で,韓国政府が国際司法裁判所への共同付託に応じなかったことから,日本政府は国際司法裁判所への単独提訴を検討していた。しかし,韓国が提訴に応じない以上,国際司法裁判所による解決は困難である。 
❻事務局
 国連が決めた計画や政策を実施する機関。その長である国連事務総長は,国際平和をおびやかす事項については安全保障理事会の注意を促すことができる。また,国際紛争の際には,その解決のために各国と折衝をするなど重要な役割を果たしている。従って,出身国や個人的利益のために行動したり,対立する国の一方に加担するような行動は許されない。
※国連事務総長(任期は5年だが2期10年が慣行となっている)
*歴代国連事務総長
 ①トリグブ・リー(ノルウェー)        1946~1952年
 ②ダグ・ハマーショルド(スウェーデン)   1953~1961年
 ③ウ・タント(ビルマ,現ミャンマー)      1961~1971年
 ④クルト・ワルトハイム(オーストリア)   1972~1981年
 ⑤ハビエル・デクエヤル(ペルー)     1982~1991年
 ⑥ブトロス・ガリ(エジプト)          1992~1996年
 ⑦コフィー・アナン(ガーナ)          1997~2006年
 ⑧潘基文(韓国)                2007~2016年
 ⑨アントニオ・グテーレス(ポルトガル)  2017年~ 
*国連事務総長の選出方法
 事務総長の選出方法について,国連憲章は「安全保障理事会の勧告に基づいて総会が任命する」と規定している。しかし,事務総長の選出も常任理事国の拒否権の範囲に含まれることから,いずれの大国にも支障のない人物が安保理の「密室」で選ばれてきた。そこで選出方法の透明性をはかるため,国連総会は2015年9月,事務総長候補者のヒアリングを行うことなどを盛り込んだ決議案を採択した。

⑶国際連合の活動
①平和と安全の維持
 国際連合憲章は,「武力による威嚇または武力の行使」禁じ,国際紛争を平和的手段によって解決することを定めている。これに違反する国に対しては,加盟国全体で制裁措置をとるという集団安全保障を掲げている(国連軍の派遣も可能だが,これまで正式に国連軍が組織されたことはない)。また,紛争の拡大を防ぐために,平和維持活動(PKO)を行い,地域紛争の解決にあたっている。
②生活向上のための国際協力
 国連は,経済社会理事会と連携協力している専門機関や総会の特別機関を中心に,開発途上国への援助(UNCTAD)・資金供与(IBRD),為替の安定・貿易の促進(IMF)などの経済対策のほか,発展途上国の児童の援助(UNICEF),難民の保護・救済(UNHCR),地球環境の保護活動(UNEP),人口問題(UNFPA),感染症の撲滅(WHO)などさまざまな国際問題にとりくんでいる。

〔研究〕経済社会理事会と連携協力する国連の専門機関のうち,世界銀行ともよばれ開発途上国への資金供与などを行なっている機関をアルファベットで答えよ。
(解答)IBRD
(解説)専門機関には国際労働機関(ILO),国連教育科学文化機関(UNESSCO),国際通貨基金(IMF),国際復興開発銀行(IBRD),世界保健機関(WHO)など17の機関がある。ほかに,総会が設置した特別機関に,国連貿易開発会議(UNCTAD),国連児童基金(UNICEF),国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連大学(UNU),国連環境計画(UNEP),国連人口基金(UNFPA)などがある。

〔研究〕国連の機関 類題(お茶女附属平成27年度)
①国連教育科学文化機関をアルファベットで答えなさい。
②国連難民高等弁務官事務所の高等弁務官を1991年から2000年の間つとめた日本人は誰か,答えなさい。⇒緒方貞子
③国連の軍事参謀委員会とテロ対策委員会は国連のどの主要機関の補助機関か,答えなさい。⇒安全保障理事会

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