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社会科散策(経済)論述№02-経済主体 [経済]

2 経済主体
 収入と支出の経済活動を行なう主体を経済主体といい,その代表的な3主体が家計・企業・政府である。

1.家計と消費生活
⑴家計の所得
①勤労所得(勤労収入)
②個人業主所得(事業収入)
③財産所得(財産収入)
④その他(年金や恩給)

⑵家計の支出
①消費支出(食料費・住居費・被服費など)
②非消費支出(税金・保険の掛け金)
③貯蓄(預貯金)
※エンゲル係数
 消費支出に占める食料費の割合をエンゲル係数という。このエンゲル係数は各家庭の生活水準をはかる一つの目安となる。その値が低いほど家計にゆとりがあることになる。

〔研究〕エンゲル係数はなぜ各家庭の生活水準をはかる目安となるのか。簡潔に答えよ。
〔解答〕食費の家計支出(消費支出)にしめる割合が高いということは,教育費・交通費・娯楽費などの支出が少ないことを意味し,それだけ余裕がないことが分かるからである。
(解説)
 もちろん,エンゲル係数だけでその目安とするわけにはいかないが,人間食べる量はたいして変わらないから,一応の目安にはなりうる。

⑶消費者の権利と保護
①消費者主権とその保護 
 商品の生産量を決めるのは企業ではなく消費者だという考え方を消費者主権という。しかし,現実には企業の強大な力により消費者の利益が損なわれている。そこで,消費者の利益を立法や行政措置により保護するべく,ケネディ大統領が唱えたのが,「消費者の四つの権利」である。これを受けてわが国でも消費者保護のための法律や制度がつくられてきた。
※消費者のための四つの権利
*商品の安全性を求める権利,商品の情報を知らされる権利,商品を選ぶ権利,消費者の意見を聞いてもらう権利

②消費者保護のための法律
 ❶消費者基本法,❷製造物責任法,❸消費者契約法,そのほか訪問販売法,割賦販売法,貸金業法などが制定された。

❶消費者基本法
 2004年に「消費者保護基本法」(1968)が改正され, 「消費者基本法」となった。行政が事業者を指導監督することによって消費者が保護されるというこれまでの考え方から, 消費者を「権利の主体」と位置付け, その権利を実現できる社会づくりをしていこうとするものである。
❷製造物責任法(PL法)
 製品(商品)の欠陥から生じた拡大損害(生命・身体・財産)について,製品の欠陥が証明できれば,その製造メーカーに損害賠償を請求することができるとする法律。
❸消費者契約法
 すべての売買契約について,事業者側に不当な行為があれば契約解除できるとした。

③消費者保護のための制度及び機関
※クーリングオフ制度
 訪問販売や電話勧誘などで契約した場合に,一定の期間内であれば無条件で契約を解除できる制度。
※消費者庁の発足
 「消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現」を目ざし,2009年に内閣府外局として発足。
※国民生活センター(国の機関),消費生活センター(地方公共団体の機関)の設置

〔研究〕製造物責任法について,次の語句を全部用いて説明しなさい。
 商品,欠陥,証明,製造メーカー,損害賠償
〔解答〕上記❷参照。
(解説)
 製造物責任法は,製品の欠陥から生じた拡大損害の賠償請求,たとえば,欠陥のある電子レンジが原因で火災となり家が全焼した場合の損害等についての賠償を電子レンジの製造メーカーに請求できるとする法律である。
 製造物責任法は消費者によるメーカーの過失の立証は不要として消費者保護をはかったものだが,日本の製造物責任法は,製品の欠陥の存在は消費者が証明しなければならないとしている。現代の高度に複雑化した精密機械の欠陥を消費者が証明することは至難のわざで過失証明との差はほとんどない。その意味ではなお不十分である。

2.生産活動
⑴生産の三要素
 企業の生産活動には,❶土地,❷資本財,❸労働力が必要である。これを生産の三要素という。

❶工場や店舗を建てるための土地
❷生産のための原材料や工場設備,機械
❸人間の労働力

⑵再生産
 企業が生産活動を繰り返すことを再生産といい,その再生産の規模が拡大されること(拡大再生産)によって,雇用が増大するとともに家計収入が増え消費も増大する。その結果,国民経済が発展する。

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社会科散策(経済)論述№01-資本主義経済とその変容 [経済]

1-1 資本主義経済 
1.生産・消費・流通
 ❶財とサービスを生産・消費し,❷それを支える活動を経済活動という。
❶商品のうち,形をなすものを財といい形のないものをサービスという。
※財には,生産に使う生産財と生活に使う消費財がある。
❷金銭等をなかだちとする商品の流れを流通という。

2.市場経済
 ❶市場を通して商品の種類や値段,質や量などが決められる。この経済のしくみを❷市場経済という。
❶市場とは,消費者が生産者や流通業者と商品をなかだちにして出会う場のこと。
❷市場経済においては,人びとは消費量,生産量を自由に決めることができ,そのために売れ残りや品不足が生ずる場合がある。売れ残る場合には価格が下がることにより生産が減少し,品不足の場合には価格が上がることにより消費が減少することになる。

3.資本主義経済
 ❶資本主義経済の特徴は❷私有財産制・経済活動の自由と❸市場経済である。
❶近代資本主義は18世紀後半にイギリスから起こった産業革命(機械制大工業)を通して成立した(資本主義の初期形態はマニュファクチュア=工場制手工業)。
❷生産のための土地や工場などの生産手段が私的に所有され,財・サービスが商品として自由に売買される経済である。
❸この資本主義経済では,限りある資源は市場における需給関係を通して最適に配分される。生産活動が計画的に行なわれる社会主義経済と対照的である。
※社会主義経済
 社会主義経済とは「生産手段の私的所有を改めて人々の共同所有とし,生産活動を私的企業の営利活動から解き放って社会化しようとする思想と運動」(東京書籍政治経済)のことである。なかでもマルクスの社会主義思想は後世に大きな影響をあたえ,20世紀前半,ソ連・東欧をはじめとする社会主義政権が誕生した。
〔研究〕資本主義経済の特徴をあげなさい。
〔解答〕私有財産と経済活動の自由(営業の自由)が認められ,需要と供給により限りある資源が適正配分されることがその特徴である。
(解説)
 私有財産の保障と経済活動の自由だけでもよい。また,生産手段(土地と工場)の私的所有や需要と供給による価格決定としてもよい。  

4.資本主義経済の発展とその弊害
 資本主義経済は,❶自由放任主義のもと生産力を飛躍的に発展させたが,その反面,❷種々の弊害をもたらした。
❶アダム・スミスの自由放任主義(19世紀)
 アダム・スミスは,その著『諸国民の富(国富論)』(1776)のなかで,個人が利己心を発揮して活動すれば「見えざる手」により社会全体の調和がとれ,全体の利益も増大すると述べ,政府は経済活動に干渉しないほうがよいと説いた。このアダム=スミスの自由放任主義は,当時の市民階級(産業資本家)の経済思想として受け入れられた。
❷資本主義経済の発展に伴う種々の弊害
①周期的に発生する恐慌。
 企業の自由競争は商品の生産過剰を生み出し,急激な景気変動をもたらした。
②独占・寡占企業の出現。
 一部の巨大企業が市場を支配するようになると,市場メカニズム(見えざる手)が有効に機能しなくなる。
③貧富差の拡大。

5.資本主義経済の変容
 20世紀に入ると,資本主義経済は世界恐慌を契機に大きく変容を遂げ,❶資本主義各国は景気回復と失業者救済のために,❷積極的な経済政策をとりはじめた。
❶アメリカのニューディール政策(1933~39年)
 フランクリン・ローズベルト大統領による不況対策。ニューディールとは「新規まき直し」という意味。テネシー川流域開発公社(TVA)の設立をはじめ,各種の失業対策・農民対策を行なった。
❷修正資本主義(混合経済)
 イギリスの経済学者ケインズは,アダム=スミスの自由放任主義を批判し,「有効需要の原理」(後述)により政府の経済への介入の必要性を説き,戦後,世界の先進資本主義国は,このケインズの主張に沿った政策をとるようになった(ニューディール政策もケインズ理論によるものと理解されているが,どっちが先かは微妙である)。
※小さな政府への回帰(新自由主義)-ケインズ批判
 しかし,政府の経済への介入は,「大きな政府」を生み出し,行政機構の肥大化や非効率的な経済運営をもたらした。そこでまた,市場メカニズムの活用の主張や「小さな政府」論が展開されるようになり,1980年代のレーガン政権(米),サッチャー政権(英)や2000年代のブッシュ政権(米),小泉政権(日)はその「小さな政府」を実践した。
※大きな政府の復権
 ところが,2008年にアメリカで起きた金融恐慌は,ブッシュ政権(米)の下で,規制撤廃や金融商品の証券化がグローバルな規模で行われた結果であるとして,その行き過ぎに警戒する動きが出ている。日本でも,規制緩和や民営化が格差社会をもたらしたとの批判が噴出した。そこで,また,「大きな政府」の主張が勢いを増している。


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