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社会科散策(政治)論述№07-平等とは [政治]

4-2 基本的人権の保障②-平等原則(平等権)

〔平等原則〕(14条)
  すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない(14条1項)。

 平等とは,絶対的平等ではなく,❶相対的平等,即ち個人の差異に応じた❷合理的な区別を認める取り扱いを意味する。

相対的平等
〔研究〕平等とは何か。
 日本国憲法は,第14条1項において,法の下の平等の原則を定めているが,ここにいう「平等」とは何か。
⑴相対的平等とは何か。
 まず,平等とは,合理的な区別を認める相対的平等を意味する。つまり,各個人の置かれた状況に応じた合理的な区別や取り扱いをすることを意味する。同じ状況にない個人,例えば大人とこども,男と女,健常者と身障者に対してその差異を考慮することなく全く同一に扱うことは真の平等とはいえない。
 もっとも,その差異とその取り扱いとの間には合理的な関連性がなければならない。たとえば,性別の違いだけで公務員になれないとするのは合理的ではなく不当な差別である。これに対し,労働条件について女子を優遇したり,少年犯罪について刑罰ではなく保護処分を科することは合理性があり不当な差別とはいえないであろう。ただ,さまざまな事例において,何が合理的なのか不合理なのかを区別することは,実際はそれほど容易なことではない(参照⇒下記の合理性判断基準)。
⑵結果の平等
 憲法14条は,「結果の平等」(実質的平等)までも許容するのか(これは不平等の「積極的差別解消措置」としても議論されている。アメリカでの黒人や女性に対する大学入試や雇用における特別枠などがそれに当たる)。
 市民革命期における市民は,財産と教養のある抽象的な「人一般」として捉えられたから,ここでは形式的に同等に取り扱うことが要求された。近代市民社会では,この形式的平等の観点から,身分差別を廃して「機会の平等」が与えられることが合理的だと考えられたのである。
 ところが,19世紀以降の資本主義経済の発展とともに,個人間の経済格差による不平等が拡大していくと,機会の平等だけでなく,機会の平等の結果生じた貧富差の解消も大事だとの考えが生じてきた。これがいわゆる結果平等の主張である。
 しかし結果の平等は,自由な資本主義社会を根底から覆しかねない。即ち,どこかの小学校や幼稚園の運動会でやっていたような「皆一緒のゴールイン」は,自由な競争を否定するものである。個人の自由を尊重する日本国憲法が「平等権」の内容として結果の平等を保障しているとは考えにくい。
 もちろん,現代大衆社会においては結果平等を考慮せずに個人の尊厳を確保することは難しくなっている。しかし,それは平等権(個人の主観的権利)の問題ではなく社会権の問題として,すなわち国家の施策(裁量)として解決していくべきものであろう。
※結果の平等(実質的平等)が14条の問題となりうる場合もあるとする立場
①「合理的な取り扱い上の違い」(合理的差別)に当たるか否かを判定するに際しては,実質的平等の趣旨が最大限考慮されなければならない(積極的差別是正措置はこの観点から検討されるべきである)。したがって,実質的平等を達成するために形式的平等を制限する法令等が,その理由で合憲となる場合もありうる」(芦部信喜)。
②「実質的平等(結果の平等)を理念を実質化したのが,社会権の諸権利である。憲法14条1項から,社会権類似の権利が派生するわけではないが,国が積極的に「実質的平等」の理念に反する行為をした場合(たとえば,所得税を改正して,全国民同率とした場合)には,これによって害をこうむった者は14条違反(平等権侵害)を主張しうる」(長尾一紘)。
※考察
 平等を機会の平等・結果の平等に分析しても益はない。なぜなら,何をもって機会の平等,結果の平等というのか明確ではないからである。即ち,形式的平等と機会の平等とは異なるのか,スタートラインの平等や初期条件の平等と結果の平等とは何がどう違うのか不明である。また,そもそも機会の平等を実現するために平等を実質化したのでは両者を区別した意味がなくなる。
 平等は絶対的にではなく相対的に合理的判断すればよいというだけの話しで,ロールズの分析を用いることにどれだけの意味があるのだろうか。平等権の中に社会権も含めよということか。

合理性の判断基準
 相対的平等の下での合理的区別の判断方法・基準については,目的と手段の間の合理的関連性が必要とされるとともに,14条1項列挙事項あるいは権利の性格に応じて,厳格審査,合理性審査がなされている。
※目的・手段審査
 立法目的の合理性(区別の目的が合理的か否かのテスト),手段の合理性(立法目的達成のための手段が合理的か否かのテスト)を判断して審査する。
※厳格審査,厳格な合理性審査,合理性審査
 表現の自由などの重要な人権については厳格な審査,14条1項列挙事項については厳格な合理性審査(中間審査),その他はより緩やかな合理性審査により合理性を判断しようとする考え方である。
 
※平等原則が問題となる事例
①人種による差別
 人種差別撤廃条約批准(1995)後,「北海道旧土人保護法」が廃止され「アイヌ文化振興法」(1997)が制定された。
②性別による差別
 女子差別撤廃条約批准(1985)後,男女雇用機会均等法が制定され(1985),2008年には国籍法が改正された(婚姻していなくても父が認知すれば国籍取得できる)。また,女性のみに課される六カ月の再婚禁止期間(待婚期間)について,従来最高裁はこれを合憲としてきたが,科学技術が発達した現在,その合理性に疑問が呈されている。そしてついに最高裁は2015年12月16日,民法上の六カ月の待婚期間は100日を超える部分において違憲と判断した。さらに,夫婦別姓の問題も平等原則の観点から議論されている。夫婦別姓はいずれか一方の姓を名のる制度で男女間に形式的な不平等はないが,夫の姓を名のることが常態化していることや姓の強制的変更の問題性が問われている。
※夫婦別姓に対する最高裁2015年12月16日)の判断=合憲
*多数意見
 夫婦同姓の制度は我が国の社会に定着してきたもので、家族の呼称として意義があり、その呼称を一つにするのは合理性がある。
*反対意見①民法750条は,婚姻の際に,例外なく,夫婦の片方が従来の氏を維持し,片方が従来の氏を改めるとするものであり,これは、憲法24条1項にいう婚姻における夫婦の権利の平等を害する。
*反対意見②民法750条は,婚姻成立に不合理な要件を課したものであり婚姻の自由を定めた憲法24条に違反する。
③社会的身分・門地(家柄)による差別
 社会的身分とは,人が社会において一時的ではなしに有する地位のこと。親子関係や非嫡出子などの地位がこれにあたる。
*尊属殺重罰規定違憲判決(1973年)⇒尊属重罰規定を削除(1995年)
 この判決は,尊属規定を設けること自体は不合理ではなく,刑が重すぎる(死刑・無期のみ)から違憲としたものである。
*非嫡出子相続分違憲判決(2015年9月4日)⇒民法改正(2015年12月5日)
 非嫡出子相続分問題とは,非嫡出子(婚外子)の相続分は嫡出子(婚姻中に懐胎した子)の半分とするとした民法の規定は平等原則に反するのではないかという問題である。この問題について従来最高裁は法律婚の保護を理由に合憲と判断していたが,親の不倫のつけを何の責のない子どもに負わせるのは不当だとの批判が強かった。
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