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社会科散策(政治)論述№13-国会 [政治]

5-1 統治機構①-国会

1.国会の地位(第41条)
 国会は『国権の最高機関であり,国の「唯一の立法機関』
 これは,国会が国民の意思を代表する機関であることから,国会は国の政治の中心的な機関であること,そして,国会だけが法律の制定や改正・廃止をする権限をもっている立法機関であることを示している。
※最高機関といっても,国会が内閣や裁判所よりも上位の地位(支配・従属関係)にあるという意味ではない。これは権力の抑制と均衡により人権保障を図ろうとする憲法の考え方からいって当然のことである。もちろん,国会を「国権の最高機関」と規定したことに何らかの法的意味を与えることも可能だが(権限機関不明の場合の権限の推定規定と捉えるなど),「最高機関」から演繹的に法的効果を導くことには異論も多い(樋口陽一ほか)。

2.国会の組織
⑴二院制(第42条)
 『国会は,❶衆議院及び❷参議院の❸両議院でこれを構成する』

❶衆議院〔465名,小選挙区289・比例代表区176,任期4年(解散あり),被選挙権25歳以上〕
❷参議院〔245名,選挙区147,比例代表区98,任期6年(3年半数改選),被選挙権30歳以上〕※2019年7月現在
❸両議院は原則として同時に活動,それぞれ独立して活動(例外として「両院協議会」)

〔研究〕参議院の存在理由について説明せよ。
 参議院設置の理由は,①衆議院の多数派のみによって国政が専断的に行なわれることを防止する,②国民の多様な意見を代表させ「良識の府」としての役割を果たさせること,③衆議院の解散中の緊急事態に対処するために第二院が必要であることなどがあげられている。
(解説)
 「第二院は,第一院と一致すれば無用であり,第一院と一致しなければ有害である」(シェイエス)と批判される。参議院がその存在意義を発揮するためには,衆議院とは異なった議員構成を考える必要がある。衆議院の単なるコピーでは存在意義はほとんどないことになる。

⑵委員会制度
 各議院にそれぞれ常任委員会,特別委員会(必要に応じて)。
 議案等の実質的で効率的な審議を確保するためにアメリカにならって導入(憲法上の制度ではない)。

3.国会の活動
⑴常会・臨時会・特別会
 活動期間の違いにより,❶常会,❷臨時会,❸特別会が区別される。

常会(通常国会)は毎年1回召集される(1月中)。
臨時会(臨時国会)は必要に応じて内閣が臨時に召集。ただ,いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,内閣はその召集を決定しなければならない。
特別会(特別国会)は衆議院解散・総選挙後30日以内に召集される。

〔研究〕いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があったにもかかわらず内閣が臨時会を召集しなかった場合,どうなるのか。
〔解答〕憲法53条により,内閣は臨時会召集決定の法的拘束を受け,召集の決定をしないことは憲法違反となる。ただ,これに対する制裁措置は存在しておらず,また,裁判所の介入も憲法裁判所の制度をとっていない以上難しい。従って,法的拘束力があるといっても実効性はない。
(解説)
 2015年10月,安倍内閣は衆議院の臨時会召集要求に対して,外遊日程を理由にこれを拒否したが,そのような理由で憲法違反行為を行なってもよいのかは疑問である。

⑵参議院の緊急集会(憲法54条2項)
 衆議院が解散されると,国会は,総選挙後に特別会が召集されるまで停止する。この間の緊急事態に対処するための制度が参議院の緊急集会。『緊急集会において採られた措置は,臨時のものであつて,次の国会開会の後十日以内に,衆議院の同意がない場合には,その効力を失ふ』(憲法54条3項)。

⑶会議の原則
①定足数
 会議体が議事を行い,議決をなすために必要な最小限度の出席者の数。『両議院は,各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ,議事を開き議決することができない』(56条1項)。
②表決数
 会議体が意思決定を行うに必要な賛成表決の数。憲法で特別の定めのある場合を除いて,『出席議員の過半数でこれを決し,可否同数のときは,議長の決するところによる』(56条2項)

4.国会の権能
⑴法律の議決権
 法律は,国民の自由や権利を制限したり,あるいは保護・援助するために制定される。 
★法律案の議決における衆議院の優越
 衆議院で可決し参議院でこれと異なった議決をした場合,衆議院の可決後参議院が60日以内に議決しない場合⇒ 衆議院は参議院が否決したものとみなせる 
 衆議院の主導により,3つの方法がある。①両院協議会の開催(各議院から各10=計20で組織),②衆議院での出席議員の三分の二以上の再議決,③廃案
⑵予算の議決権
 予算の財源はおもに国民の税金である。その規模や使い途は国民の生活に大きな影響をあたえる。そこで,予算を決めるのは国民の代表機関である国会とされている。但し,予算を作成し提出することができるのは内閣だけ。       
★予算の議決における衆議院の優越
 衆議院で可決し,参議院でこれと異なった議決をした場合 ⇒ 両院協議会(必要的)
 衆議院の可決後,参議院が30日以内に議決しない場合   ⇒ 自然成立
⑶条約の承認権
 憲法73条3号は,条約の締結権を内閣に与えているが,『事前に,時宜によっては事後に,国会の承認を経ることを必要とする』。これは,条約の締結は国民の利益に影響することから,国会の関与が必要と考えられたためである(事前承認が原則)。
★条約の承認における衆議院の優越
 予算の議決の場合と同じ。ただし,予算のような衆議院先議はない。
⑷内閣総理大臣の指名 
 『内閣総理大臣は,国会議員の中から国会の議決で,これを指名する』(憲法67条)。→議院内閣制
★内閣総理大臣の指名における衆議院の優越
 衆議院で可決し,参議院でこれと異なった議決をした場合 ⇒ 両院協議会(必要的)
 衆議院の可決後,参議院が10日以内に議決しない場合   ⇒ 自然成立 
⑸弾劾裁判所の設置 
 『国会は,罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため,両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける』(憲法64条)
 罷免事由には,著しい職務上の義務違反・職務怠慢・裁判官としての威信を著しく失うべき非行がある。弾劾裁判所は,各議院からそれぞれ7人ずつ選出される裁判員で構成されるが,国会から独立してその職務を行う。
※国会にあるのは設置権限のみであり,弾劾裁判自体を行なう権限はないことに注意。 
⑹憲法改正の発議権
 『各議院の総議員の三分の二以上の賛成で,国会が,これを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない』(憲法96条1項)
※議院の権能 
 両議院が協同して行使するのではなく,それぞれ独自に行使する権能として,法律案提出権,議院規則制定権,議員懲罰権,国政調査権がある。

〔研究〕国会では衆議院の優越が認められているがそれはなぜか,説明しなさい。(50字前後)類題(お茶女附属平成24年度)
〔解答〕衆議院には解散があり,また議員の任期が4年と参議院より短く,より民意が反映されやすいと考えられているからである。56字
(解説)
 憲法上,衆議院に優越が認められているのは,法律・予算の議決,条約の承認および内閣総理大臣の指名の場合である。なお,予算については衆議院に先議権が認められている。
 また,予算議決・条約承認,首相指名は,早期の決着をはかる必要から,法律の議決より強い衆議院の優越が認められている。したがって,衆議院優越の理由には「円滑審議の要求」も含まれる。ただ,本試験では上述の〔解答〕の理由でないと点はつかないだろう。

〔研究〕成立する法律案の多くが内閣の提出によるものであり,議員提出法案は2割程度にとどまっているが,これはなぜか。
〔解答〕議会の多数派によって構成される内閣が提出する法案が否決されることは少なく,これに対して野党提出の議員立法は否決されることが多いからである。
(解説)
 国会議員は一人でも国会図書館や議院法制局の協力を得て法案を作成することが可能である。ただ,衆議院では20名以上、参議院では10名以上の賛成がないと提案することができない。さらに予算を伴う場合はそれぞれ50名、20名以上の賛成が必要となる(国会法56条)。

〔研究〕法律案の多くが内閣提出であることの憲法上の問題性を,簡単に説明しなさい。 80字前後 
〔解答〕内閣提出法案は,各省庁の官僚が発案・作成したものが大多数であることから,その数の増大は,官僚主導の政治を招き,唯一の立法機関である国会の役割が損なわれるおそれがある。83字
(解説)
 行政需要が増大し行政の肥大化が進んだ現代においては,政策の立案・作成のすべてを国会が決めることはもはや不可能で,行政の専門家集団(官僚)に委ねざるを得なくなっているのが実情である。しかし,そうすると国会を「唯一の立法機関」とした憲法の趣旨,即ち,国民すべてに適用される法律は国民の代表者が決めるべきだとする国民主権の原理(正当性)に反するのではないか,という問題が生ずる。
 この問題については,法律の発案・作成は官僚であっても,その成立には国会の議決が必要であるから,国会が「唯一の立法機関」であることを損なうものではないとの答えが用意されている。確かに,憲法違反とはいわないまでも,「唯一の立法機関」という国会の地位を考えると「全国民の代表」である国会議員による立法の増大が望まれる。
※議員立法の増大が民意を反映した政治といえるのだが,国会議員や官僚の現状(醜態)を見ると民意などどうでもよくなる。

5.国会議員の特権
⑴不逮捕特権
 『両議院の議員は,法律の定める場合を除いては,国会の会期中逮捕されず,会期前に逮捕された議員は,その議院の要求があれば,会期中これを釈放しなければならない』(憲法50条)
⑵免責特権
 『両議院の議員は,議院で行った演説,討論又は表決について,院外で責任を問はれない』(憲法51条)。

〔研究〕国会議員に特権が認められている理由は何か。 
〔解答〕不逮捕特権の理由は,政府の不当逮捕から議員の身体の自由を守ること,あるいは議院の審議権を確保することにある。免責特権の理由は,国会議員の独立性を確保し,議院における議員の言論活動を最大限に保障することにある。    

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