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社会科散策(政治)論述№16-地方自治 [政治]

5-4 統治機構④-地方自治

1.地方自治
 『❶地方公共団体の組織及び運営に関する事項は,❷地方自治の本旨に基いて,法律でこれを定める』(92条)。

「地方公共団体」とは
 地方自治を行う都道府県や市町村を地方公共団体(地方自治体)という。地方公共団体には,おもな機関として首長と地方議会がおかれている。

〔研究〕東京特別区(23区)は地方公共団体か。
⇒最高裁はこれを否定したが,区長公選制の復活により地方公共団体に含める見解が多い。
⑴地方議会(議員の任期4年,被選挙権25歳以上)
 地方議会には,市町村議会と都道府県議会があり,それぞれ議員は住民の直接選挙によって選ばれる。地方議会のおもな仕事は,条例の制定・改正・廃止,予算の議決,決算の承認など。
※条例は「法律の範囲内」で制定できる(94条)。
 「法律の範囲内」については,憲法が法律事項としているものを条例で定めることができるか,法律と抵触・競合する場合はどうするかが問題となる。ここは,地方自治の考え方が反映されるが,自治体の事務については,地方自治の本旨を重視した解釈をすべきであろう。この点,最高裁は,「条例が法律に違反するかどうかを判断するには法律と条例の規制対象や規制文言を対比するだけでなく,それぞれの趣旨・目的・内容・効果を比較すべきである」と判示。

⑵首長(任期4年,被選挙権=知事30歳・市町村長25歳以上)
 首長は地方公共団体の執行機関で,市町村長と都道府県知事がそれにあたる。首長も住民の直接選挙で選ばれる。首長は,議会で決まったことを実行に移すほか,予算や条例案をつくって議会に提出したりする。また,地方行政の最高責任者として,役所の職員などの公務員を指揮・監督する。
 補助機関として,首長(知事・市町村長)を補佐する副知事・副市町村長,会計事務をつかさどる会計管理者が置かれている。

⑶首長と地方議会との関係
 首長と地方議会は,互いに独立しており,また,内閣のように議会から生まれるという関係にもない。そこで,首長制と呼ばれている。

〔研究〕首長制の特徴について述べよ。
〔解答〕①首長公選制,②首長の拒否権(再議請求),③議会の首長不信任決議,④首長の議会解散権がその特徴としてあげられる。
(解説)
 首長制は大統領制(①と②)と議院内閣制(③と④)をミックスした制度である。
⑷地方公共団体のしごと
 地方公共団体のしごとは,社会福祉,教育,生活環境の整備,廃棄物やゴミの処理など広範囲にわたる。地方公共団体の事務には,各自治体の事務である「自治事務」と,国(又は都道府県)の事務であるが,その執行が自治体(都道府県又は市町村)に委託された「法定受託事務」(例えば,戸籍事務・旅券の交付など)がある。 

「地方自治の本旨」とは
 地方の自治の本旨とは住民自治と団体自治の二つの要素を含む。住民自治とは地方の政治が住民の意思に基づいて行われること,団体自治とは地方の政治が地方公共団体みずからの意思と責任でなされるとことを意味する。この地方自治の本旨に反するような法律などは憲法違反として無効となる。

〔研究〕地方自治は『民主主義の学校』といわれているが,その意味を簡潔に答えなさい。
〔解答〕民主主義の精神は,地域社会や身のまわりの問題を解決するなかで培われていくという意味である。
(解説)
 民主主義という言葉は多義的であるが,ここでは自治(政治参加と自立)の精神の意味である。イギリスの政治家ブライスの言葉と言われている。

〔研究〕戦前にも地方自治はあったのか。
⇒戦前は,大日本帝国憲法に地方自治に関する規定はなかったものの,市制・町村制,府県制・郡制がしかれていた。しかし,これらの地方制度は,中央集権体制の下での近代化を図ろうとする明治政府の出先機関にすぎず,府県知事は国の官吏とされていた。住民自治・団体自治をその本質とする地方自治が実現するのは,戦後の日本国憲法の制定以後である。

2.住民の権利(直接請求権)
 地方自治については,国の政治とちがって,住民に多くの直接請求権が認められている。
①条例の制定・改廃請求(イニシアティブ) 
 有権者の50分の1以上で首長に請求⇒首長が議会にかけその結果を公表する
②(事務)監査請求(イニシアティブ)    
 有権者の50分の1以上で監査委員に請求⇒監査結果の公表・議会・首長への報告
③議会の解散請求 (リコール)   
 有権者の3分の1以上で選挙管理委員会に請求⇒住民投票(過半数の同意で解散)
④議員・長の解職請求(リコール) 
 有権者の3分の1以上で選挙管理委員会に請求⇒住民投票(過半数の同意で解職)
⑤主要役員の解雇請求(リコール)
 有権者の3分の1以上で首長に請求⇒議会で議員2/3 以上出席,その3/4 以上の賛成で解雇

3.地方財政                     
⑴おもな歳入(2017年度)
①地方税(45.1%)
 都道府県税,市町村民税,事業税,固定資産税など。
②国からの補助
 地方交付税交付金(21.9%),国庫支出金(15.6%)など。地方交付税交付金は地域間の格差を是正するために国から地方公共団体に交付するもので,その使い途は自由。国庫支出金は国からまかされた仕事についての国から補助金。
③地方債の発行(10.6%)
 地方公共団体が発行する公債(借り入れ)でその半分以上は国からの借金。
※三割自治
 地方公共団体の自主財源(地方税など)が3~4割程度しかなく,自治体収入の多くを国の補助金(地方交付税交付金・国庫支出金)に頼っている状況を表現した言葉。

〔研究〕いわゆる三割自治の問題性を簡単に答えなさい。
〔解答〕財源の多くを国に頼るということは国の関与を受けるということであり,それだけ地方自治の実現が難しくなるということである。

⑵おもな歳出
 学校や図書館などに使われる教育費,道路や橋の建設に使われる土木費,公務員の給与関係費,地方債の返済に使われる公債費,社会福祉に使われる民生費など。
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