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社会科散策(政治)論述№05-憲法改正・憲法尊重擁護義務 [政治]

3-4 日本国憲法の特色④

〔憲法改正〕(第96条)                         
❶この憲法の改正は,各議院の総議員の三分の二以上の賛成で,国会がこれを発議し国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行はれる投票において,その過半数の賛成を必要する。
❷憲法の改正について前項の承認を経たときは,天皇は,国民の名で,この憲法と一体を成すものとして,直ちにこれを公布する。

 日本国憲法の三つの基本原理,すなわち,国民主権・人権尊重・平和主義については,憲法改正できないと考えられている(憲法改正限界説)。なぜなら,これらは日本国憲法の本質的部分であり,その変更はもはや改正とはいえず,新憲法の制定にほかならないからである。したがって,憲法96条の手続で改正できるのは,当該3つの基本原理を損なわない場合ということになる。
 憲法改正の論点として,現在,知る権利やプライバシー権などの新しい人権の憲法への明記,首相公選制,一院制,道州制,軍隊などの導入ないし設置が問題となっている。
 なお,2007年に,「日本国憲法の改正手続に関する法律」(憲法改正手続法)が制定され,2010年5月18日に施行された。
〔研究〕憲法9条を改正して核兵器(大陸間弾道ミサイル)を装備することは可能か。
〔解答〕各自検討されたい。

〔憲法尊重擁護義務〕(第99条)
 天皇又は摂政及び国務大臣,国会議員,裁判官その他の公務員は,この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
〔研究〕日本国憲法第99条の憲法尊重擁護義務規定の中に「国民」の文言がないが,その理由を述べよ。類題(平成31年同志社高校)
〔解答例①〕そもそも国民が憲法をつくったのは,国家権力による人権侵害を抑制するためであり,憲法99条は国民の側から公権力を行使する公務員対して憲法を守る義務を課した規定だからである。
〔解答例②〕国民が自分で制定した憲法を尊重擁護するのは当たり前であり,国民の義務として規定する必要はなかったからである。
(解説)
 憲法99条に「国民」文言がないのは単なる脱漏ではなく,日本国憲法が近代的立憲主義思想に忠実だということを示す積極的な意味(あえて外した)を持っているからだと解する立場(樋口陽一)もある。すなわち,憲法99条の規定の仕方は,公権力の担い手に憲法尊重擁護義務を課す一方で,国民ひとりひとりにはどんなタブーも課さないという考え方を反映しているとする。
 なかなかの難問だが,「自分でつくったきまりを自分が守るのは当たり前だから」でも合格点は十分つくであろう。また,「日本国憲法は国民に憲法を破壊する自由をも認めているからである」と書いてもよい。尚,同志社高校の設問には,「日本国憲法が立憲主義の精神を基礎においた憲法であることを念頭において答えよ」とあり,難易度はより高い。この設問に対しては解答例①の内容を書く必要がある。
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社会科散策(政治)論述№04-天皇制 [政治]

3-3 日本国憲法の特色③

〔天皇制〕
①象徴としての天皇                           
 『天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』(第1条)
②国家機関としての天皇
 『天皇は,この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ,国政に関する権能を有しない』(第4条),『天皇の国事に関する行為には,内閣の助言と承認を必要とし,内閣が,その責任を負ふ』(第3条)。
《天皇の国事行為》
 次の天皇の国事行為はいずれも形式的・儀礼的行為で,その行為についての責任はすべて内閣が負う。
※第4条2項 
 国事行為を委任すること
※第6条1項・2項
①国会の指名に基いて内閣総理大臣を任命すること
②内閣の指名に基いて最高裁判所長官を任命すること
※第7条
①憲法改正,法律,政令及び,条約を公布すること
②国会を召集すること
③衆議院を解散すること
④国会議員の総選挙の施行を公示すること
⑤国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること
⑥大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証すること     
⑦栄典を授与すること
⑧批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること 
⑨外国の大使及び公使を接受すること
⑩儀式を行ふこと

〔研究〕日本国憲法はなぜ天皇を「象徴」と規定したのか。
〔解答例〕天皇が政治的権力をもたない象徴的な存在であることを印象づけるためである。
(解説)大日本帝国憲法下において,主権者である天皇は憲法に明記するまでもなく象徴でもあった。そこで日本国憲法が天皇を象徴と明記したのは,天皇が政治的権能を有しない存在であることを表明したものと捉えることができる。

〔研究〕天皇の「国会開会式のおことば」,外国親善訪問,外国元首の応接といった公的な行為は憲法4条・7条に違反しないか。
〔解答〕天皇の象徴としての地位に基づく公的行為として認めるのが妥当である。
(解説)合憲説の理由付けとしては,象徴行為説のほかに,私的行為説,国事行為拡張説(儀式に含まれる)などがある。違憲説(国事行為限定説)もある。

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