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社会科散策(政治)論述№02-日本国憲法の特色① [政治]

3-1 日本国憲法の特色①

⑴国民主権
 国の政治のあり方を最終的に決める力および権威を主権という。国民主権とは,この主権が国民にあることを意味している。日本国憲法は,その前文と第1条に国民主権を明記している。国民主権を具体化する方法として,❶間接民主制と❷直接民主制がある。

原則としての間接民主制
 前文第1段
 「日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し,…そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって,その権威は国民に由来し,その権力は国民の代表者がこれを行使し,その福利は国民がこれを享受する。」
 第43条第1項
 両議院は,全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
例外としての直接民主制 
①最高裁判所裁判官に対する国民審査(第79条)              
②地方自治特別法についての住民投票(第95条)              
③憲法改正の要件としての国民投票(第96条) 
       
⑵基本的人権の尊重と権力分立                           
 基本的人権の尊重とは,人が生まれながらに有する権利は最大限に尊重されなければならないということである。日本国憲法は,基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」(11条)とし,また,❶「すべて国民は,個人として尊重される」(13条)と定めて,基本的人権の尊重を基本原理とした。その基本的人権を国家権力の濫用から守るために,❷国家権力の作用を立法権・行政権・司法権の3つに分離し,相互に権力の抑制と均衡をはかる統治機構(権力分立)が採用されている。

❶国家や民族を優先する全体主義ではなく,個人に究極の価値をおく個人主義の採用を表明した規定である。
❷日本国憲法の採用した権力分立の統治機構は,アメリカのような厳格分離ではなく,三権が相互依存関係にあり,とくに議院内閣制のもとで国会と内閣はより緊密な関係となっている。

〔研究〕ファシズム国家において個人の権利はどのような考えのもとで,どのように扱われたか。民主主義国家における個人の権利の扱い方との違いをふまえて説明しなさい。類題(2017年大阪教育大附属池田出題)
[解答]民主主義国家では,個人の権利は平等に保障されるとの考えのもとに,個人の権利は個人間の利害調整といった正当な理由がなければ制限できないとされる。これに対し,ファシズム国家では,個人よりも国家の利益が優先するとの考えのもとで,個人の権利は国益という漠然とした理由で強制的に剥奪・制限された。
(解説)
 ファシズムの定義は明確ではないが,以下の特徴を有する。①自由主義・共産主義の否定,②一党独裁体制(議会制の否定),③経済統制,④軍事力による市場拡大。その代表例が,イタリアのファシスト党やナチス・ドイツの一党独裁体制。なお,ソ連のスターリンによる共産党一党独裁も全体主義体制でありファシズムと同様の特徴を有している。
 本問は,全体主義と個人主義の違いを問う難問である。出題者は,「これに適切に答えられる受験生(中学生)がどれだけいるのだろうか。受験生の実際の答案を見てみたい。」という思い(興味)で出題したのであろう。

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社会科散策(政治)論述№01-憲法とは [政治]

1 憲法とは何か。
                     
 憲法は❶国の基本法であるとともに❷国民の権利や自由を守るという重要な役割を担っている。従って,憲法に反する法律や命令をつくることは許されず,国の法体系は❸憲法を頂点として形成される。

イギリスでは,「~憲法」という名称をもった法は存在しない。マグナカルタをはじめ,権利章典のような制定法や判例の集積により成立した判例法がイギリスの憲法となっている。
フランス人権宣言は,『すべて権利の保障が確保されず,権力分立が定められていない国家は憲法を有しない』(16条)と規定している。つまり,国家権力を制限して国民の権利や自由(人権)を守ることを目的としない憲法は近代的な憲法ではないと言っている。
憲法の種類
①成文憲法と不文憲法‥成文の法典が存在するか否かの区別。日本やアメリカは成文憲法の国であるのに対し,イギリスは不文憲法の国。
②硬性憲法と軟性憲法‥通常の法律の改正より手続が厳格か否かによる区別。日本国憲法は硬性憲法。(憲法96条参照)
③欽定憲法と民定憲法‥憲法制定主体による区別。大日本帝国憲法は欽定憲法,日本国憲法は民定憲法。

〔研究〕日本国憲法は大日本帝国憲法の改正手続により制定された。とすると,大日本帝国憲法と同様に欽定憲法ではないのか。
〔解答〕ポツダム宣言の受諾によって日本は天皇主権から国民主権への転換がなされた。従って,日本国憲法は主権者たる国民が制定した民定憲法であり,改正手続によったのは政治的混乱を防止するための便宜に過ぎない(いわゆる8月革命説による説明)。

2 日本国憲法の制定

 ポツダム宣言受諾後,連合国軍総司令部(GHQ)の作成した案(マッカーサー草案)をもとに憲法改正作業が進められた。その改正案は帝国議会で審議され,1946年11月3日に日本国憲法として公布され,翌年5月3日から施行された。
                            
〔研究〕現憲法の制定過程において,日本政府が作成した当初の憲法改正案が総司令部(GHQ)に受け入れられなかったのはなぜか。
〔解答〕政府案(松本案)は,明治憲法と同様に天皇主権を残すなど民主的な憲法とはいえなかったからである。 
(解説)憲法問題調査委員会(いわゆる松本委員会)が起草した憲法改正草案は,大日本帝国憲法の若干の修正にとどまるもので,全面的改変を意図していた総司令部の方針とは相いれなかった。そこで総司令部は,いわゆる「マッカーサー三原則」をもとにみずから草案作成に着手した。
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