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社会科散策(政治)論述№12-参政権・国務請求権・国民の義務 [政治]

4-7 基本的人権の保障⑦-参政権,国務請求権,国民の義務            

〔参政権〕
⑴原則としての間接選挙
 国民の意見は選挙で選ばれた❶代表者を通じて政治に反映される。例外として,❷直接民主制が採用されている。
間接民主制
 前文第1段,43条1項,15条1項,3項,93条2項
直接民主制
 憲法改正国民投票(96条),最高裁判所国民審査(79条),地方自治特別法の住民投票(95条)
⑵選挙に関する憲法上の原則
普通選挙の原則(第15条3項)
 一定の年齢に達すれば原則として全員に選挙権が与えられる。
平等選挙の原則(14条)                        
 一人一票が与えられることおよびその一票の重みに差があってはいけない。
秘密選挙の原則(15条4項)
 無記名投票のこと。つまり投票用紙に候補者名のみを書き,自分の名前は書かないで投票すること。
直接選挙の原則
 有権者が直接議員を選出する制度。選挙人が中間選挙人を選出し,その中間選挙人が議員を選出する間接選挙と対置される。地方議会選挙については,憲法93条2項に明文の規定があるが,国会議員選挙には特別の規定がない。しかし,主権者の意思(民意)は忠実に国政に反映されなければならないという要請から,国会議員の選挙にも直接選挙の原則が妥当する。
〔研究〕普通選挙の原則と平等選挙の原則との違いを答えよ。
〔解答〕普通選挙とは,選挙資格の平等,平等選挙は選挙価値の平等を意味する。つまり,普通選挙は選挙権の有無についての平等であり,平等選挙は付与された選挙権の内容についての平等の問題である。 
〔研究〕議員定数不均衡問題とは何か。 
〔解答〕選挙区間にける有権者数と議員定数(当該選挙区で選ばれる人数)との比率が異なり,有権者の選挙価値(一票の重み)に格差が生じている問題。
(解説)
 例えば,A選挙区の有権者数が10万人で議員定数が10人,B選挙区の有権者数が2万人で議員定数が10人のとき,B選挙区の有権者はA選挙区の有権者の5倍の価値をもつ選挙権を有することになる。
〔研究〕日本の選挙制度の課題の1つに「一票の格差」の問題がある。なぜ問題になるのか説明しなさい。(80字前後)類題(お茶女附属平成26年度)
〔解答〕一票の格差とは,一票の重み,即ち有権者の選挙結果への影響力の格差を意味し,これの放置は,選挙の重みの平等を保障した選挙平等の原則(憲法14条)に反することになるからである。86字
(解説)
 従来より,最高裁は「一票の格差」を理由に,幾度も衆議院議員選挙の議員定数訴訟において違憲あるいは違憲状態判決を下してきた。最近では参議院議員選挙でも違憲状態判決を出している。ただ,違憲「無効」判決はその影響の大きさに鑑み下されてこなかった。これら違憲(状態)判決に呼応してか,ようやく国会は,その格差を2倍以内に収めようとしているが,まだ紆余曲折がありそうだ。
 違憲だが選挙自体は有効だという判決は最高裁の苦肉の策だが,ゆがんだルールによって選ばれた者達が作った法律は,果たして国民の意思を適切に反映しているのだろうか。
⑶選挙制度
 各選挙区から1名を選ぶ制度を小選挙区といい,各選挙区から2名以上を選ぶ制度を大選挙区という。また,政党に投票し各政党の得票率に応じて議席を配分する制度を比例代表制という。
 現在の衆議院議員選挙は,小選挙区制と比例代表制を組み合わせた小選挙区比例代表並立制で行われている。また,参議院議員選挙は,都道府県単位の選挙区制と全国を一つにした比例代表制に分けて行われている。
※拘束名簿式比例代表制…衆議院の比例代表選出議員(11ブロック)     
※非拘束名簿式比例代表制…参議院議員選挙比例区(全国1区)
〔研究〕小選挙区は死票が多くなるという問題がある。その意味を簡潔に答えなさい。
〔解答〕死票が多いということは,議席に結びつかない票が多くなるということであり,有権者の意思が議席に正確に反映されないことを意味する。
(解説)
 小選挙区制とは,各選挙区から1名を選出する制度である。この小選挙区制には,ほかに,大政党に有利となり二大政党制になりやすい,政局が安定する,といった特徴がある。小選挙区制と対照的なのが,比例代表制で,死票が少なく,民意が正確に議席に反映さやすい,小党が乱立する,といった特徴がある。
〔研究〕小選挙区制では各政党の得票率と議席率が大きく異なってしまうが,これはなぜか。
〔解答〕1選挙区1人しか選出されないため,大政党に属する議員が多く選出される結果となるから。
(解説)
 小選挙区制が大政党に有利なのは,各選挙区の有権者の政党支持割合が類似しており,どの選挙区でも大政党に属する候補者一人が当選することになるからである。それ故,小選挙区制では小政党は議席を獲得することが困難となるから,大政党に対抗する勢力となるために結合せざるを得ず,結果,二大政党制になりやすい。
⑷選挙のしくみと運営
※選挙運動に関する規制-①戸別訪問の禁止(公選法 138条),文書図画頒布の制限(同法 142条, 243条),事前運動の禁止(同法 129条, 239条)
※選挙に関する事務は,国におかれる中央選挙管理会,都道府県・市町村ごとにおかれる選挙管理委員会が行いう。
※選挙公営(選挙の公正・公平)
 選挙運動に対し国または地方公共団体が種々の便宜や経費を負担する制度を選挙公営という。現在日本では,新聞広告,政見放送,経歴放送,公営施設の使用の個人演説会,選挙公報の発行などが公営とされている。     

〔国務請求権〕(人権保障をより確実なものにするための権利)
⑴請願権(第16条)…参政権的役割を果たしている。
 何人も,損害の救済,公務員の罷免,法律,命令又は規則の制定,廃止又は改正その他の事項に関し,平穏に請願する権利を有し,何人も,かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
⑵裁判を受ける権利(第32条)
 何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。 
⑶国家賠償請求権(第17条)-国(公務員)の違法行為によって生じた損害への償い。
 何人も,公務員の不法行為により,損害を受けたときは,法律の定めるところにより,国又は公共団体に,その賠償を求めることができる。⇒国家賠償法
⑷刑事補償(第40条)-国の適法行為によって生じた損害への償い。
 何人も,抑留又は拘禁された後,無罪の裁判を受けたときは,法律の定めるところにより,国にその補償を求めることができる。⇒刑事補償法

〔国民の義務〕
⑴勤労の義務(27条1項)
⑵保護する子女に普通教育を受けさせる義務(26条2項)
⑶納税の義務(30条)
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社会科散策(政治)論述№11-社会権 [政治]

4-6 基本的人権の保障⑥-社会権(25条,26条,27条,28条)                                
〔生存権〕(25条)                    
 「すべて国民は,❶健康で文化的な最低限度の生活を営む❷権利を有する」(25条1項)

健康で文化的な最低限度の生活
 これを具体化するために生活保護などの公的扶助や健康保険・年金保険などの社会保険といった社会保障制度が整備されている。
生存権は「権利」である。
 生存権は,従来,「国に政治の指針(努力目標)を示したにすぎず,生存権を根拠にただちに金銭等を要求することはできない。国民が政府に金銭等を要求するためには,予算の裏付けや生存権を具体化した法律(例えば生活保護法)が必要である」(プログラム規定説)とされてきた。しかし,現在の学説・判例は生存権が「権利」(裁判規範)であることを認めている。ただ,その「権利」の内容については議論が分かれている(生存権を具体化した法律の憲法適合性や立法不作為の憲法適合性を争うことも許されるかなど)。
※最高裁の考え方(朝日訴訟・堀木訴訟)については,いわゆるプログラム規定説を採ったと理解する向きもあるが,生存権の裁判規範性(法的拘束性)は認めており,プログラム規定説を採ったと断定するのは妥当でない。

〔教育を受ける権利〕(26条)
 すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく❶教育を受ける権利を有する」(26条1項)。❷義務教育は,これを無償とする(同2項)

❶この権利を実現するために,国は教育制度を維持し,教育条件を整備する義務を負い,教育基本法や学校教育法が定められている。
※旭川学テ事件最高裁判決(昭和51年)
 いわゆる教育権の所在について,最高裁は,国家教育権説も国民教育権説も「極端かつ一方的」であるとして否定した。しかし,教育内容について広汎な国の介入権を肯定して学テを適法との判断を示した。
❷無償とは,「授業料不徴収」の意味である(最判39年)。

〔勤労の権利〕(27条)                 
 「すべて国民は,❶勤労の権利を有し,❷義務を負ふ(27条1項)。
❶国は国民に対して,勤労の機会を保障する政策を行ったり,適切な勤労条件を整備する責務を負う。これを受けて,労働基準法や最低賃金法などが定められている。
❷勤労の義務は強制ではなく道徳的義務にとどまる。ただ,働けるのに働かない場合,生活保護を受けられないなどの不利益を受ける。

〔労働基本権〕(28条)
 「❶勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は,これを❷保障する(28条)。

❶団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)を労働基本権あるいは労働三権という。
❷使用者に対し劣位に立つ労働者の地位を保護・強化することがその目的。労働基本権(労働三権)を具体的に保障するために,労働組合法や労働関係法が定められている。

〔研究〕公務員の労働基本権(争議権)制限は合憲か。
※最高裁は全逓東京中郵判決(最判昭和41年)で,公務員にも労働基本権が保障されるが,その職務の性質上,国民全体の利益の保障という見地からの制約を当然の内在的制約として内包するにとどまると判旨した上で,厳しい4条件をあげて合憲判決を下した。しかし,全農林警職法事件判決(最判昭和48年)では,これを変更して公務員の地位の特殊性と職務の公共性を理由に一律かつ全面的な制限を合憲とした。
 尚,芦部憲法は,「憲法が公務員関係の存在と自立性を憲法秩序の構成要素として認めていること」にその制限根拠があるとし,その制限は,その職務の性質,違い等を勘案しつつ,必要最小限度の範囲にとどまらなければならないとする。

〔研究〕公務員の政治活動の自由の制限は合憲か。
猿払事件最高裁合憲判決(最判49年)
 郵便局員が選挙用ポスターを公営掲示板に掲示したり,配布した行為が国家公務員法に違反するとして起訴された事件で,最高裁は規制目的と政治禁止行為との間に合理的関連性があるとして合憲と判断した。しかし,これに対しては,実質的に「明白の原則」と異ならないとの批判がある。
 
〔研究〕「労働三権」といわれる権利のうち「団結権」とは具体的に何をすることを保障しているか。その目的も含めて答えよ。類題(学大附属)
〔解答〕使用者の地位と対等な立場に立たせるために,労働者に労働組合を作ることを保障している。
(解説)
 労働三権とは,団結権,団体交渉権,団体行動権のことで,団体交渉権は労働者の団体が使用者と労働条件について交渉する権利,団体行動権は労働者の団体が労働条件の実現を図るために団体行動(中心は争議行為)を行なう権利である。
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社会科散策(政治)論述№10-経済の自由 [政治]

4-5 基本的人権の保障⑤-自由権(経済の自由)

〔経済の自由〕
 職業選択の自由(22条)と❸財産権の保障(29条)には,第13条に重ねて,❸「公共の福祉」による制限が規定されている。

憲法22条1項の「職業選択の自由」は,職業を選択するだけでなく,選択した職業を遂行する自由(営業の自由)も含まれる。
 最高裁は経済活動の自由については,「合理性」の基準,即ち,立法目的及び立法目的達成手段の双方について,一般人を基準にして合理性が認められるかどうかを審査する。そして,さらに職業活動の規制目的に応じて二つに分け,消極目的規制については「厳格な合理性」の基準,積極規制についてはゆるやかな「明白の原則」を用いて審査している。
※小売市場距離制限合憲判決(最判昭和47年)
 最高裁は「距離制限」を小売商保護のための積極規制と捉え,「明白性」審査により合憲と判断した。
※薬局距離制限違憲判決(最判50年)
 最高裁は,「距離制限」を国民の生命・健康への危険防止のための消極規制と捉え,「厳格な合理性」の基準により違憲と判断した。
※公衆浴場距離制限合憲判決(最判平成元年1月20日,3月7日)
 最高裁(1月20日)は,「距離制限」を既存の浴場業者の転廃業防止のための積極規制と捉え合憲と判断。また,3月7日判決では,消極(衛生確保,病気・伝染の防止)・積極両目的の併有を理由に合憲と判断した。

憲法29条
 ①財産権は,これを侵してはならない。
 ②財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。
 ③私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。
※第1項は,個人の具体的な財産権を保障するとともに,私有財産制の保障(個人が財産権を享有しうる法制度)をも保障する。
※森林法共有林分割請求制限規定違憲判決(最判62年)
 最高裁は,当該分割請求制限規定の目的を「森林経営の安定を図り~国民経済の発展に資する」として積極目的規制と捉えながら,手段審査について厳しい基準を用いて違憲の判断を下した。この判断は従来の最高裁の審査手法(消極規制=厳格審査,積極規制=明白性の原則)と異なることから,最高裁に審査手法の変化があったのではないかと捉えられている。
※奈良県ため池条例事件合憲判決(最判38年)
 災害防止のためため池の堤とうに農作物を植える行為等を禁止する条例は,財産権の内容は法律で定めるとした憲法29条2項に反するのではないかが問題となった。これに対して最高裁は,堤とう使用禁止は当然受忍されるべき制約であるから,災害の原因となる堤とうの使用行為は憲法・民法の保障する財産権の埒外にあるとして,合憲と判断した。
※予防接種事故補償問題
 予防接種による健康被害につき,憲法29条3項を根拠として補償請求できるかが問題となっている。
 ⇒ 肯定・否定分かれるが,財産権の侵害に補償が行われるなら,生命・身体への侵害に補償がなされるのは当然であり,「特別犠牲」として補償を認めるべきであろうか。
 
❸本条項の「公共の福祉」の意味については,内在的制約(人権の調整原理)だけでなく外在的制約(社会経済的制約)も含まれると考えられている。

〔研究〕公共の福祉とは何か。
 個人主義(個人の尊重主義)を基本原理とする日本国憲法において,「公共の福祉」を全体の利益(全体主義・国家主義)と考えることは許されない。では,個人主義のもとで人権を制約する「公共の福祉」はどう考えたらよいか。
⇒人権は一人の個人に与えられるものではなく,地球上の人間全員に平等に与えられているものである。とすると,一人だけ人権を主張することや他人の人権を侵害することはゆるされず,その調整が必要となる。その調整原理(内在的制約)が「公共の福祉」と理解されている。ただ,人権を制約する理由は人権同士の衝突だけでなく,他人の利益や自己の利益(パターナリズム)のための場合があることも否定できない。また,経済的自由の規制については,22条・29条の「公共の福祉」には内在的制約のほか外在的制約(政策的規制)の意味も含めて考える必要がある。

〔研究〕経済の自由が精神の自由よりも強度の規制(二重の基準)を受けるのはなぜか。
〔解答〕
 第一に,経済活動の自由を野放しにすると,貧富差拡大,恐慌,独占といった弊害が生じ,その弊害を除くためにより強い規制が必要となるからである。第二に,生存権や勤労権といった社会権を保障するためには,経済活動に対するより積極的な規制が必要となるからである。
(補足)
 一方,表現の自由を中心とする精神の自由に対する規制は慎重でなければならない。なぜなら,精神の自由は「こわれ易く傷つき易い」権利であり,且つ一旦こわれるとその回復が難しいからである。


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社会科散策(政治)論述№09-身体の自由 [政治]

4-4 基本的人権の保障④-自由権(身体の自由)

〔身体の自由〕            
①奴隷的拘束・意に反する苦役からの自由(18条)
 個人の尊厳を害する❶奴隷的拘束は絶対的に禁止され,刑罰としても許されない。❷意に反する苦役は犯罪による場合を除いて禁止される。

❶戦前の監獄部屋やたこ部屋などがそれにあたる。
❷強制的な労役のことである。
〔研究〕徴兵制(兵役義務)は意に反する苦役にあたるか。
〔解答〕兵役を強制する兵役義務は強制労働を課すものでであり,「意に反する苦役」にあたる。
(解説)解答としては以上の記述で足りるが,徴兵制の問題はそれほど簡単なものではない。この問題は,軍隊の存在を前提にしているから,まず,憲法9条の改正が必要となる。次に憲法18条との関係では,「犯罪による場合」以外に例外として認められないのかが問題となる。
 現在,法律上強制される場合として,裁判員法の裁判員候補者に対する出頭・審理参加義務,消防法・水防法・災害救助法の労働提供義務などがあるが,兵役義務もこれらと同様に考えられないか。 ⇒ 徴兵制は個人の生命・身体を危険にさらす制度であり,他の人命救助義務等と同等に考えることは妥当とはいえないであろう。また,憲法19条(良心の自由)にかかわる問題でもあるから,あいまいな「公共の福祉」だけの理由で許容することは妥当でない。

②適正手続の保障と罪刑法定主義(31条)
 本条は刑事手続(行政手続も含む)だけでなく,実体(犯罪と刑罰)をも法律で定めることを要請している。       
③刑事手続上の保障(33~39条)
〔研究〕死刑制度の是非
(解説)
 論点①死刑は残虐刑か(36条),②国家による殺人か(矛盾しないか),③誤判の危険(取りかえしがつかない),④「目には目を」(応報)の妥当性,⑤凶悪犯罪に対する抑止効果はあるか,⑥世論の動向,⑦国際比較(先進国の多くが廃止している)等に対する判断が要求されるが,この中での最重要論点は③の誤判の危険性である。これをどうクリアー(説得)するかが存廃論の鍵となるだろう。
〔研究〕拷問によって得た自白が証拠とされないのはなぜか(自白法則)。
〔解答〕
 虚偽自白の恐れがあるから,人権侵害だから,違法捜査の抑制に最も良い方法だからといった理由があげられる。
〔研究〕自白だけで有罪とされないのはなぜか(補強法則)。
〔解答①〕自白偏重にともなう捜査機関の自白強要を防止するため。
〔解答②〕自白は信用されやすく,有罪認定を自白だけに頼るのは危険だから(誤判防止)。
(解説)
 解答①②は自白法則との関係が問題となる。また,解答②は自白の信用力(証明力)を問題としているが,自白に証明力が足りないとは一概にはいえないとの疑問がある。そこで,補強法則を政策規定と解する見解もある。なお,「公判廷の自白」については,補強証拠がなくても有罪とできるとするのが最高裁の立場である(自白強要の恐れがなく,また,信用性が担保できるゆえ)。
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社会科散策(政治)論述№08-精神の自由 [政治]

4-3 基本的人権の保障③-自由権(精神の自由)
※自由権=国家権力から干渉されないことをその本質とする。

〔精神の自由〕…必要最小限度の規制
①思想・良心の自由(19条)
 「思想及び良心の自由は,これを侵してはならない」
 人が心の中で何を考えまた思ったとしても,これを制限することは不可能である。従って,この自由の保障の意味は,❷「その内心の自由侵害可能な行為」からの自由を保障することにある。

❶思想・良心とはものの考え方であり,単なる事実の知不知は含まれない。ただ,事実を証言させる行為が良心を侵害することもあり,両者の区別は明確とはいえない。
❷内心の自由侵害可能な行為とは,告白を強制したり内心に反する行為を強制することである。
★具体的に問題となった事例(最高裁はいずれも合憲又は適法判断を示している)
*名誉棄損行為に対して新聞紙上に謝罪広告を掲載することを命ずる判決
*企業の採用面接で学生運動等の経歴を質問する行為(三菱樹脂事件)
*公立学校の入学式・卒業式での国旗掲揚・国歌斉唱の起立強制(職務命令)
 
②信教の自由(20条,89条)
 第20条は❶信教の自由を保障するとともに❷国家と宗教の分離(政教分離)を定めている。また,89条は財政面から政教分離の徹底を図っている。

信仰の自由及び宗教的行為の自由を保障する。
※具体例
*宗教上の教義を理由に公立高校の剣道の授業を拒否する行為(最高裁は学生の拒否行為を認めた)
*教会学校への出席を優先して日曜日授業参観日の授業を欠席した児童に対して「欠席記載」という不利益を課した行為(東京地裁は児童側の主張を退けた)
政教分離
〔研究〕日本国憲法は第20条及び89条において,政教分離を規定しているが,なぜ,政治と宗教は分離されなければならないのか,簡潔に答えなさい。
〔解答例①〕政治権力が特定の宗教と結びつくと,他の宗教が阻害・弾圧され,個人の宗教の自由(信仰する自由・信仰しない自由)が侵害されるからである。
〔解答例②〕真理を追求する宗教を政治に持ち込むと,妥協によって成立する民主政治が成り立たなくなるからである。
〔解答例③〕理性的な討論の場に宗教(教主の哲学)を持ち込むと政治が堕落するからである。
(解説)
 似たような問題が2015年度の同志社高等学校の入試問題に出ていたが,解答例①の解答を要求したものであった。
 戦前の日本(明治憲法下)でも宗教の自由は認められていたが,その保障は弱く法律によらなくても制限できるというもので,実際,神道が事実上国教化されていた。そのため,キリスト教やその他の新興宗教への弾圧が繰り返されていた。その反省をも踏まえて,現憲法は20条で宗教の自由・政教分離を保障するとともに89条で財政的側面からの政教分離を保障したのである。
 この政教分離については,最高裁は,両者(政治と宗教)の結びつきの程度を考慮して合憲・違憲の判断を下している(津地鎮祭訴訟=合憲,愛媛玉ぐし料訴訟=違憲)。本来,政治と宗教は厳格に分離されることが望ましいが,現代の福祉国家においては,国家が宗教団体にかかわりを持たざるを得ない場合もある。たとえば,宗教団体が運営する私立学校(小・中・高・大・幼稚園・保育園)に対しても他の私立学校と同じように補助金を交付しなければ不公平となる。結局は程度問題とならざるを得ないのである。

③表現の自由(21条)
 「集会,結社及び言論,出版その他一切の❶表現の自由は,これを保障する。❷検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。」(第21条)

表現の自由に対する規制
 民主政治の根幹をなす表現の自由は最大限に尊重されなければならない。もちろん,暴動を煽動したり,他人の名誉を棄損する行為は犯罪として処罰される。しかし,その場合でも政治的表現を含む煽動や公人(政治家)の名誉やプライバシーに関わる言動を安易に処罰してしまったのでは,表現の自由を保障した意義が損なわれてしまう。したがって,表現の自由を規制する法律等の制定や適用は慎重でなければならず,また,その制定・適用に対して裁判所は厳格に審査する必要がある。

〔研究〕メディアリテラシー類題(筑波附属平成31年)
 国会議員の活動についてマスメディアからその情報を得る場合,メディアリテラシーが必要とされるのはなぜか。説明しなさい。
〔解答〕マスメディアは,それぞれの政治的立場から情報を取捨選択して国民に報道しており,その情報を無批判に受け入れることは情報操作や選好に基づく意思形成の危険があるからである。
(解説)
 メディアリテラシーとは,情報の価値を判断する能力および情報を取捨選択する能力を意味する。情報社会が進展し多種多様な情報が氾濫するなか,各個人が受け取った情報の価値を判断し,かつその情報を取捨選択する能力なくして自己決定することは難しくなっている。メディアリテラシーの欠如はマスメディアや国家の情報操作による世論形成を招く結果となる。個人を尊重する民主主義国家の実現に国民の情報批判能力は不可欠である。
 本問は,国会議員の活動についてのマスメディアの情報に対するメディアリテラシーの必要について問われている。これはマスメディアには,政府(与党)寄り,政府批判(野党)寄りの新聞やテレビが存在していることを再認識させるものといえるが,メディアリテラシーは,玉石混交の情報が飛び交うインターネット社会においてより重要なものとなっている。

検閲
 検閲とは,国家機関(行政・司法)が,表現物の内容を事前に審査し不適当と認めるものの発表を禁止する制度である。戦前の発禁制度がその典型だが,戦後では,猥褻物の税関検査や教科書検定制度などが問題となっている(最高裁はいずれも検閲や事前規制にはあたらないとしている)。
※教科書検定制度
*最高裁判決(1993年)
 最高裁は,検定制度について,教科書として合格しなくても,一般の書籍として発行することが禁止されるわけではないから,検閲にはあたらないとする(1993年)。
*近隣諸国条項
 昭和57年に中国や韓国から教科書検定に対する非難が起こり外交問題に発展したことから,日本政府は,社会科教科書の検定基準を改めて「近隣アジア諸国との国際理解と国際協調に配慮すること」という項目を加えた。
 これに対しては,「内政干渉を許す結果となった」,「日本だけにこのような条項も設けたのは不当だ」,「歴史認識や歴史直視などといった外交カードを与えてしまった」といった批判が,最近の中国や韓国の強行な姿勢(反日政策)とあいまって強くなっている。

④学問の自由と大学の自治(23条)
 学問の自由の保障をより強固なものとするために,学術の中心機関である大学には,「大学の自治」が制度的に保障されていると考えられている。即ち,学長や教授の選任,大学施設や学生の管理は大学の自主的判断に委ねられるとされている。ただ,最高裁は,学生の演劇発表会(松川事件を題材とした)については,真に学問的な研究と発表のためのものではないとして,大学の自治を享有しないとした(ポポロ事件)。

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社会科散策(政治)論述№07-平等とは [政治]

4-2 基本的人権の保障②-平等原則(平等権)

〔平等原則〕(14条)
  すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない(14条1項)。

 平等とは,絶対的平等ではなく,❶相対的平等,即ち個人の差異に応じた❷合理的な区別を認める取り扱いを意味する。

相対的平等
〔研究〕平等とは何か。
 日本国憲法は,第14条1項において,法の下の平等の原則を定めているが,ここにいう「平等」とは何か。
⑴相対的平等とは何か。
 まず,平等とは,合理的な区別を認める相対的平等を意味する。つまり,各個人の置かれた状況に応じた合理的な区別や取り扱いをすることを意味する。同じ状況にない個人,例えば大人とこども,男と女,健常者と身障者に対してその差異を考慮することなく全く同一に扱うことは真の平等とはいえない。
 もっとも,その差異とその取り扱いとの間には合理的な関連性がなければならない。たとえば,性別の違いだけで公務員になれないとするのは合理的ではなく不当な差別である。これに対し,労働条件について女子を優遇したり,少年犯罪について刑罰ではなく保護処分を科することは合理性があり不当な差別とはいえないであろう。ただ,さまざまな事例において,何が合理的なのか不合理なのかを区別することは,実際はそれほど容易なことではない(参照⇒下記の合理性判断基準)。
⑵結果の平等
 憲法14条は,「結果の平等」(実質的平等)までも許容するのか(これは不平等の「積極的差別解消措置」としても議論されている。アメリカでの黒人や女性に対する大学入試や雇用における特別枠などがそれに当たる)。
 市民革命期における市民は,財産と教養のある抽象的な「人一般」として捉えられたから,ここでは形式的に同等に取り扱うことが要求された。近代市民社会では,この形式的平等の観点から,身分差別を廃して「機会の平等」が与えられることが合理的だと考えられたのである。
 ところが,19世紀以降の資本主義経済の発展とともに,個人間の経済格差による不平等が拡大していくと,機会の平等だけでなく,機会の平等の結果生じた貧富差の解消も大事だとの考えが生じてきた。これがいわゆる結果平等の主張である。
 しかし結果の平等は,自由な資本主義社会を根底から覆しかねない。即ち,どこかの小学校や幼稚園の運動会でやっていたような「皆一緒のゴールイン」は,自由な競争を否定するものである。個人の自由を尊重する日本国憲法が「平等権」の内容として結果の平等を保障しているとは考えにくい。
 もちろん,現代大衆社会においては結果平等を考慮せずに個人の尊厳を確保することは難しくなっている。しかし,それは平等権(個人の主観的権利)の問題ではなく社会権の問題として,すなわち国家の施策(裁量)として解決していくべきものであろう。
※結果の平等(実質的平等)が14条の問題となりうる場合もあるとする立場
①「合理的な取り扱い上の違い」(合理的差別)に当たるか否かを判定するに際しては,実質的平等の趣旨が最大限考慮されなければならない(積極的差別是正措置はこの観点から検討されるべきである)。したがって,実質的平等を達成するために形式的平等を制限する法令等が,その理由で合憲となる場合もありうる」(芦部信喜)。
②「実質的平等(結果の平等)を理念を実質化したのが,社会権の諸権利である。憲法14条1項から,社会権類似の権利が派生するわけではないが,国が積極的に「実質的平等」の理念に反する行為をした場合(たとえば,所得税を改正して,全国民同率とした場合)には,これによって害をこうむった者は14条違反(平等権侵害)を主張しうる」(長尾一紘)。
※考察
 平等を機会の平等・結果の平等に分析しても益はない。なぜなら,何をもって機会の平等,結果の平等というのか明確ではないからである。即ち,形式的平等と機会の平等とは異なるのか,スタートラインの平等や初期条件の平等と結果の平等とは何がどう違うのか不明である。また,そもそも機会の平等を実現するために平等を実質化したのでは両者を区別した意味がなくなる。
 平等は絶対的にではなく相対的に合理的判断すればよいというだけの話しで,ロールズの分析を用いることにどれだけの意味があるのだろうか。平等権の中に社会権も含めよということか。

合理性の判断基準
 相対的平等の下での合理的区別の判断方法・基準については,目的と手段の間の合理的関連性が必要とされるとともに,14条1項列挙事項あるいは権利の性格に応じて,厳格審査,合理性審査がなされている。
※目的・手段審査
 立法目的の合理性(区別の目的が合理的か否かのテスト),手段の合理性(立法目的達成のための手段が合理的か否かのテスト)を判断して審査する。
※厳格審査,厳格な合理性審査,合理性審査
 表現の自由などの重要な人権については厳格な審査,14条1項列挙事項については厳格な合理性審査(中間審査),その他はより緩やかな合理性審査により合理性を判断しようとする考え方である。
 
※平等原則が問題となる事例
①人種による差別
 人種差別撤廃条約批准(1995)後,「北海道旧土人保護法」が廃止され「アイヌ文化振興法」(1997)が制定された。
②性別による差別
 女子差別撤廃条約批准(1985)後,男女雇用機会均等法が制定され(1985),2008年には国籍法が改正された(婚姻していなくても父が認知すれば国籍取得できる)。また,女性のみに課される六カ月の再婚禁止期間(待婚期間)について,従来最高裁はこれを合憲としてきたが,科学技術が発達した現在,その合理性に疑問が呈されている。そしてついに最高裁は2015年12月16日,民法上の六カ月の待婚期間は100日を超える部分において違憲と判断した。さらに,夫婦別姓の問題も平等原則の観点から議論されている。夫婦別姓はいずれか一方の姓を名のる制度で男女間に形式的な不平等はないが,夫の姓を名のることが常態化していることや姓の強制的変更の問題性が問われている。
※夫婦別姓に対する最高裁2015年12月16日)の判断=合憲
*多数意見
 夫婦同姓の制度は我が国の社会に定着してきたもので、家族の呼称として意義があり、その呼称を一つにするのは合理性がある。
*反対意見①民法750条は,婚姻の際に,例外なく,夫婦の片方が従来の氏を維持し,片方が従来の氏を改めるとするものであり,これは、憲法24条1項にいう婚姻における夫婦の権利の平等を害する。
*反対意見②民法750条は,婚姻成立に不合理な要件を課したものであり婚姻の自由を定めた憲法24条に違反する。
③社会的身分・門地(家柄)による差別
 社会的身分とは,人が社会において一時的ではなしに有する地位のこと。親子関係や非嫡出子などの地位がこれにあたる。
*尊属殺重罰規定違憲判決(1973年)⇒尊属重罰規定を削除(1995年)
 この判決は,尊属規定を設けること自体は不合理ではなく,刑が重すぎる(死刑・無期のみ)から違憲としたものである。
*非嫡出子相続分違憲判決(2015年9月4日)⇒民法改正(2015年12月5日)
 非嫡出子相続分問題とは,非嫡出子(婚外子)の相続分は嫡出子(婚姻中に懐胎した子)の半分とするとした民法の規定は平等原則に反するのではないかという問題である。この問題について従来最高裁は法律婚の保護を理由に合憲と判断していたが,親の不倫のつけを何の責のない子どもに負わせるのは不当だとの批判が強かった。
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社会科散策(政治)論述№06-新しい人権 [政治]

4-1 基本的人権の保障①-新しい人権

1 一般的基本権(包括的人権)
⑴個人の尊重と幸福追求権(13条)
 すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

 プライバシー権,❷自己決定権は,「幸福追求権」(憲法13条)を根拠に,❸環境権は,13と25条(生存権)を根拠に,❹知る権利は21条(表現の自由)あるいは国民主権の原理(前文・第1条)を根拠に主張されている。

プライバシー権
 プライバシー権は,従来,新聞・雑誌などの大衆紙により有名人の私生活が暴露されたことなどから,「私生活がみだりに公開されない権利」(宴のあと事件)として主張された。しかし,情報社会の進展にともない,最近では「自己の情報をコントロールする権利」をも含めて捉えられるようになっている。その理由は,情報技術が発達し,個人情報が行政機関やマスメディアなどの企業に集中的に管理されている現代社会において,自己の情報が勝手に操作され,また流布される危険が生じてきたからである。
※個人情報保護法の制定(2003年)
※マイナンバー法(2013年制定,2016年開始)
⇒正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」

〔研究〕マイナンバー制度について,その①制度趣旨及び②適用分野について説明せよ。
〔解答〕①制度趣旨=行政の効率化,手続の簡素化(国民の利便性向上),国民年金の未納や生活保護不正受給防止などがその狙いとされている。②適用分野=現段階では,社会保障,税(国税),災害対策の3分野に適用が限定される。
(解説)
 マイナンバー制度は,将来その適用範囲が拡大していくと管理社会が極端にまで進展する恐れがある。例えば,病歴・犯罪歴,納税の延滞・脱税の有無,海外渡航記録,資産(不動産)など,あらゆる個人情報が政府の管理下に置かれることになる。ここまでくるとプライバシー権の侵害と言わざるを得ないが,テロなどの凶悪犯罪が増えてくると,情報管理を望む世論が形成されかねない危険がある。

自己決定権
 自己決定権とは,個人が自分の生き方や生活のしかたについて自由に決定できるとする権利である。同性婚,妊娠中絶・避妊の自由,尊厳死・安楽死などが自己決定権の内容として主張されている。その理由としては,都市化の進展,女性の社会進出の増大,医療技術の進歩などにより,個人の生き方の選択の幅が大きくなったことがあげられる。
※インフォームド・コンセント
*医師が患者に十分説明し理解させた上で,患者の自由意思によって治療の合意・拒否を決めることを意味する。これを欠いた治療は患者の自己決定権の侵害となり損害賠償事由となる。
※同性の婚姻届の是非
*渋谷区議会は2015年3月,同性カップルを婚姻に相当する関係と認める条例を制定した。
環境権
 環境権とは,健康で快適な生活のために良い環境(自然環境)を享受・支配する権利である。この環境権が提唱された理由は,高度経済成長期に公害が深刻化するとともに,環境破壊がすすんだからである。⇒環境アセスメント法,環境基本法(旧公害対策基本法)の制定。
知る権利
 知る権利とは,情報の受け手(国民)が,情報の送り手(政府・マスメディア)に対して,情報の提供を求める権利である。情報社会が進展するにともない,情報が国家やマスメディアに独占され,情報の相互交換による意思決定という表現の自由の本来の機能が損なわれてしまったことから,実質的に表現の自由を実現するべく唱えられたのが,新しい人権としての「知る権利」である。したがって,その根拠規定は憲法21条(表現の自由)に求められる(国民主権に根拠づける立場もある)。ただ,その内容は不明確でその具体化には法律の制定(情報公開法)が必要となる。
※アクセス権
 政府に対して情報を求める権利を情報公開請求権と言うのに対して,マス・メディアに対して自己の意見を掲載・放送するよう要求する権利をアクセス権という。いずれもその具体化には法律の制定が必要だが,アクセス権を具体化した反論権については否定的な見解が多い(最高裁も認めていない)。
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社会科散策(政治)論述№05-憲法改正・憲法尊重擁護義務 [政治]

3-4 日本国憲法の特色④

〔憲法改正〕(第96条)                         
❶この憲法の改正は,各議院の総議員の三分の二以上の賛成で,国会がこれを発議し国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行はれる投票において,その過半数の賛成を必要する。
❷憲法の改正について前項の承認を経たときは,天皇は,国民の名で,この憲法と一体を成すものとして,直ちにこれを公布する。

 日本国憲法の三つの基本原理,すなわち,国民主権・人権尊重・平和主義については,憲法改正できないと考えられている(憲法改正限界説)。なぜなら,これらは日本国憲法の本質的部分であり,その変更はもはや改正とはいえず,新憲法の制定にほかならないからである。したがって,憲法96条の手続で改正できるのは,当該3つの基本原理を損なわない場合ということになる。
 憲法改正の論点として,現在,知る権利やプライバシー権などの新しい人権の憲法への明記,首相公選制,一院制,道州制,軍隊などの導入ないし設置が問題となっている。
 なお,2007年に,「日本国憲法の改正手続に関する法律」(憲法改正手続法)が制定され,2010年5月18日に施行された。
〔研究〕憲法9条を改正して核兵器(大陸間弾道ミサイル)を装備することは可能か。
〔解答〕各自検討されたい。

〔憲法尊重擁護義務〕(第99条)
 天皇又は摂政及び国務大臣,国会議員,裁判官その他の公務員は,この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
〔研究〕日本国憲法第99条の憲法尊重擁護義務規定の中に「国民」の文言がないが,その理由を述べよ。類題(平成31年同志社高校)
〔解答例①〕そもそも国民が憲法をつくったのは,国家権力による人権侵害を抑制するためであり,憲法99条は国民の側から公権力を行使する公務員対して憲法を守る義務を課した規定だからである。
〔解答例②〕国民が自分で制定した憲法を尊重擁護するのは当たり前であり,国民の義務として規定する必要はなかったからである。
(解説)
 憲法99条に「国民」文言がないのは単なる脱漏ではなく,日本国憲法が近代的立憲主義思想に忠実だということを示す積極的な意味(あえて外した)を持っているからだと解する立場(樋口陽一)もある。すなわち,憲法99条の規定の仕方は,公権力の担い手に憲法尊重擁護義務を課す一方で,国民ひとりひとりにはどんなタブーも課さないという考え方を反映しているとする。
 なかなかの難問だが,「自分でつくったきまりを自分が守るのは当たり前だから」でも合格点は十分つくであろう。また,「日本国憲法は国民に憲法を破壊する自由をも認めているからである」と書いてもよい。尚,同志社高校の設問には,「日本国憲法が立憲主義の精神を基礎においた憲法であることを念頭において答えよ」とあり,難易度はより高い。この設問に対しては解答例①の内容を書く必要がある。
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社会科散策(政治)論述№04-天皇制 [政治]

3-3 日本国憲法の特色③

〔天皇制〕
①象徴としての天皇                           
 『天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』(第1条)
②国家機関としての天皇
 『天皇は,この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ,国政に関する権能を有しない』(第4条),『天皇の国事に関する行為には,内閣の助言と承認を必要とし,内閣が,その責任を負ふ』(第3条)。
《天皇の国事行為》
 次の天皇の国事行為はいずれも形式的・儀礼的行為で,その行為についての責任はすべて内閣が負う。
※第4条2項 
 国事行為を委任すること
※第6条1項・2項
①国会の指名に基いて内閣総理大臣を任命すること
②内閣の指名に基いて最高裁判所長官を任命すること
※第7条
①憲法改正,法律,政令及び,条約を公布すること
②国会を召集すること
③衆議院を解散すること
④国会議員の総選挙の施行を公示すること
⑤国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること
⑥大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証すること     
⑦栄典を授与すること
⑧批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること 
⑨外国の大使及び公使を接受すること
⑩儀式を行ふこと

〔研究〕日本国憲法はなぜ天皇を「象徴」と規定したのか。
〔解答例〕天皇が政治的権力をもたない象徴的な存在であることを印象づけるためである。
(解説)大日本帝国憲法下において,主権者である天皇は憲法に明記するまでもなく象徴でもあった。そこで日本国憲法が天皇を象徴と明記したのは,天皇が政治的権能を有しない存在であることを表明したものと捉えることができる。

〔研究〕天皇の「国会開会式のおことば」,外国親善訪問,外国元首の応接といった公的な行為は憲法4条・7条に違反しないか。
〔解答〕天皇の象徴としての地位に基づく公的行為として認めるのが妥当である。
(解説)合憲説の理由付けとしては,象徴行為説のほかに,私的行為説,国事行為拡張説(儀式に含まれる)などがある。違憲説(国事行為限定説)もある。

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社会科散策(政治)論述№03-日本国憲法の特色② [政治]

3-2 日本国憲法の特色②

〔平和主義〕
 日本国憲法は,徹底した平和主義をとりいれ,前文に平和の決意を宣言し,第9条でその具体化をはかっている。
※前文第2段
 日本国民は,恒久の平和を念願し,人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって,平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われらの安全と生存を保持しようと決意した。 
※第9条(戦争放棄)
❶日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。
❷前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。

<第9条の論争点>-〔政府見解〕
〔論点Ⅰ〕第9条は自衛戦争も放棄しているのか。⇒「国際紛争を解決する手段として」の戦争には,侵略戦争のほかに自衛戦争も含まれるのか。「前項の目的」とは何か。
 自衛戦争放棄説(1項放棄説と2項放棄説がある)と非放棄説(「前項の目的」を「国際紛争を解決する手段としては」に限定する)が対立する。9条2項放棄説が多数説。政府見解もこの多数説に与するとされているが,交戦権の意味を限定しておりその立場は明確ではない。
〔論点Ⅱ〕自衛隊は「戦力」ではないのか。
 自衛のためであっても,あらゆる「戦力」の保持は禁止されているとする一方,ここにいう「戦力」にいたらない程度の,自衛のための最小限度の実力の保持は認められるとしている。そして自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力にとどまっているため,9条の「戦力」にはあたらないとする。
 「必要最小限度の実力」の意味については,その時々の国際情勢や軍事技術の水準等によって変化するとされ,従って,核兵器でさえ,防衛的な性格を持つものであれば憲法上,保持を禁止されているわけではないとしている(現在,日本が核兵器を持たないのは,非核三原則等の政策決定によるものにすぎないとする)。
〔論点Ⅲ〕「集団的自衛権」の行使は可能か。
 日本政府は従来,集団的自衛権(日本政府と密接な関係にある他国が武力攻撃を受けた場合,それを日本への攻撃とみなして共同して防衛にあたる権能)については,保有しているが,その行使は憲法上できないとしてきた。そこで,日米安保条約の効果的な運用への寄与をはかることを目的とする周辺事態法も直接戦闘行為が行われることのない「後方地域」に限り,また,支援の一環としての「物品の提供」は弾薬等の「武器の提供」を含まないものとして許容してきたのである。
 ところが,2014年7月安倍内閣は閣議決定で解釈を変更し,翌年(2015年9月19日),集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法が成立した。即ち,①日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され,日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態(存立危機事態)で,②我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がない場合は,③必要最小限度の実力行使であれば,集団的自衛権による武力行使は憲法9条のもとでも可能であるとした。
〔研究〕「集団的自衛権」とはどのような権利か,説明しなさい。類題(2017年大阪教育大附属池田)
(解答)上記参照。
※最高裁の判断
 最高裁は,駐留米軍については「戦力」にはあたらないとしたが,自衛隊については,違憲とも合憲とも判断していない。また,自衛戦争および自衛ための戦力保持についても判断を留保(回避)している。
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